折衷案を採用しないメジャーの年俸調停
ボストン・レッドソックスが20日、田沢純一投手と1年契約で合意したと発表した。金額は337万5000ドル(約3億9400万円)。田沢は今季もレッドソックスの一員としてプレーするわけだが、この契約はすんなり合意に至ったわけではない。
田沢の希望額415万ドル(約4億8500万円)に対し、レッドソックスの掲示は270万ドル(約3億1500万円)と大きな開きがあり、田沢は昨年オフに続き2年連続となる年俸調停の申請をしていたからだ。
年俸調停と聞くと日本ではマイナスなイメージで捉えられるが多く、過去に調停を申請した選手はたったの7人しかいない。日本の年俸調停は、次年度の選手契約締結のために契約を保留された選手(契約未更改の選手)なら誰でも申請できる。
調停の流れが、選手と球団で合意に達しなかったとき、まずはコミッショナーに対して調停を申請する。そして、コミッショナーが申請を受理した場合、直ちに参稼報酬(年俸)調停委員会を構成。構成された委員会は、調停を受理した日から30日以内に調停を終結し、決定した参稼報酬額を統一契約書に記入し、連盟に提出する。以上が、日本での年俸調停の大まかな流れだ。
MLBは日本と異なり、調停権を得られるのは、MLBでの在籍期間が3年に達した選手からである。選手側と球団側がそれぞれ年俸希望額を提示し、MLB機構と選手会が選定した中立的な第三者から構成される公聴会によって採決が下される。日本では、選手側と球団側の希望額の中間あたりをとった折衷案の年俸で決まることもあるが、アメリカでは球団側か選手側か、どちらか一方の希望額で決まる。
毎年100人以上が調停を申請するメジャーリーグ
アメリカでは毎年100人以上の選手が調停を申請する点も日本との大きな違いだろう。ただ、調停を申請してから公聴会までに選手、球団の双方が妥協し、契約に至るケースがほとんどである。
今回の田沢のケースも、調停を申請したが公聴会の前にお互いの主張するほぼ中間の金額で契約に至っている。こういったケースが多くなるのは、前述したように調停で決められる金額は折衷案をとることがないためだ。調停でどちらかの金額に決まるなら、「お互いの妥協点を見つけましょう」ということである。はっきりと決着をつける、アメリカらしい制度とも言えるだろう。
レッドソックスはこのオフにメジャー屈指のクローザー、クレイグ・キンブレルを獲得した。現状では、上原浩治がセットアッパーを務め、田沢は上原の前に投げることになるだろう。昨季よりも登板のタイミングをつかむのが難しくなるかもしれないが、日本人メジャーリーガー初となる、4年連続60試合以上登板に期待がかかる。
文=京都純典(みやこ・すみのり)