プロ初本塁打が満塁本塁打という衝撃
今季、パ・リーグ新人王争いのダークホースと言えるかもしれない。ソフトバンクの、上林誠知のことだ。
仙台育英高では1年生の秋から4番を任され、2年夏、3年春夏と計3回甲子園に出場した。2013年のドラフト4巡目でソフトバンクに指名された上林は、ルーキーシーズンは三軍で86試合に出場、打率.284、8本塁打、14盗塁。二軍では9試合の出場に終わったものの、三軍でじっくりと鍛えられた。
プロ2年目となる昨年は、飛躍のきっかけをつかむシーズンとなった。5月19日にプロ入り初めて一軍出場選手登録をされ、同21日のオリックス戦の8回に代打でプロ初出場を果たした。その後、二軍に戻ったが、8月22日の楽天戦でプロ入り初のスタメン出場。同25日のロッテ戦では第一打席にプロ初安打を放つと、三打席目にはプロ初本塁打を逆転満塁という派手な一発で飾った。日本人選手がプロ初本塁打を満塁で放ったのは史上57人目で、20歳0カ月での満塁本塁打は球団史上最年少記録だった。
二軍では8月に打率.373を記録し、ウエスタン・リーグの月間MVPも受賞。シーズンを通しては4番と9番以外すべての打順を経験するなど(最多は3番の26試合)、88試合に出場し、打率.334。ウエスタン・リーグの首位打者に輝いた。6三塁打、16盗塁、103安打もリーグ最多だ。
イチローと同じ3年目にブレークなるか?
今季は、開幕から一軍での活躍が期待されるが、その可能性は大いになる。上林は、プロ1年目は内野手だったが、昨季から外野に転向。二軍ではレフトで55試合、センターで2試合、ライトで22試合とレフトでのスタメン出場が多かった。
昨季、ソフトバンクの一軍のスタメンは、レフトに内川聖一、センターに柳田悠岐、ライトに中村晃や福田秀平という布陣が多かった。このメンバーのなかに割って入るのは簡単ではないが、李大浩がメジャーでプレーすることが濃厚であるいま、内川や中村が一塁に回るケースも考えられる。ということは、空いたレフトかライトを上林が奪うかもしれない。
高卒からプロ入り後、2年は二軍でもまれ3年目にブレークとなれば、あのイチローとも重なる。背番号も同じ51だ。昨季まで、上林の通算打席は45。新人王の資格は「支配下登録されてから5年以内で前年までの出場が投手は30イニング以内、野手は60打席以内の選手」のため、上林にも資格はある。
パ・リーグで野手の新人王は1998年の小関竜也(西武)が最後で、投手有利であることは確かだが、三軍から二軍と順調にステップアップしている今季の上林に期待せずにはいられない。
文=京都純典(みやこ・すみのり)