プロ野球ファンの必需品!
2月も下旬に差し掛かり、書店の一角を「プロ野球選手名鑑」が賑わせる時期がやってきた。
プロ野球ファンにとっては観戦に欠かせない必需品であり、名鑑を手にすることで開幕が近づいてくることを実感するだろう。出版社側にとっても毎年安定した売り上げが期待できるキラーコンテンツであり、最近は競合する会社が増えたこともあって“いかに独自色を出すか”がポイントとなっている。
かつての選手名鑑といえば、室内練習場や練習グラウンドをバックに、選手が無表情で撮られるというパターンだった。
ところが、約10年前くらい前から白やグレーの背景で、メジャーリーグのように笑顔で撮られるケースが主流となった。加えて、一番変わったのは選手の個人情報に関する記載だろう。
キッカケは2005年に施行された個人情報保護法。これを期に選手名鑑も大きく変わった。
かつては家族構成の箇所に家族の名前と年齢が書かれていたが、現在では「夫人と○男○女」という記載のみになった。今となっては「何と無防備な!」という話になってもおかしくはない。
それだけではない。以前は家族構成だけでなく、なんと選手の住所まで名鑑で公表されていたのだ。
ファンレターの送り先という意味で掲載していたかもしれないが、個人情報の取り扱いが厳しくなった今となっては信じられない話である。
かつて村田兆治氏(元ロッテ)はファンからの手紙に返事を書いたり、原辰徳氏(元巨人)はファンから送られた色紙にサインを書き、同封された返信用封筒に入れ、送り返したという微笑ましいエピソードもある。なお、住所を公表したくない選手は「球団気付」という扱いになっていた。
ファンだけでなく、プロ野球選手にとっても選手名鑑は大事なツールとなっている。ある元選手に聞くと、「空き時間の時、選手名鑑をネタに『○○の出身校は?』『年俸は?』と選手名鑑でクイズをやっていました」という。
また、プロ野球選手を多く輩出した名門校からプロ入りした新入団選手にとっては、名鑑を見ることでどのチームにどの先輩がいるかを確認・予習する「教科書」になっているかもしれない。他にも、一流選手の「愛車」の欄を見て「○○が乗れるように頑張るぞ」とモチベーションを上げる選手もいるだろう。
『プロ野球選手名鑑』――。それは単なる一冊の本ではなく、手に取る人それぞれにドラマがある。