不動のポジションに緊急事態
1月の終わり、新シーズンのはじまりへ期待みなぎるオリックスファンに水を差すニュースが飛び込んできた。
攻守の要である安達了一が緊急入院。安倍晋三首相の持病としても有名で、厚生労働省から特定疾患にも指定されている潰瘍性大腸炎を患ってのことだった。
既に退院しており、一刻も早く復帰してくれることを願って止まないが、チームメイトのT-岡田に「オリックスの優勝には安達が必要」とまで言わしめる存在の離脱はチームにとって大きな痛手になる。
この緊急事態で浮上するのが、「誰が安達の穴を埋めるのか」という問題。つまりは内野の要・ショートを誰が担うのか?ということである。
安達といえば広い守備範囲とアクロバティックなプレーに定評があり、軽快なフットワークと正確なスローイングで球場を沸かせてきた。各ポジションで熾烈なレギュラー争いが繰り広げられる中で、とりわけ可及的速やかに安達離脱の影響を最小限に留める策を打たなければならない。
そこで浮上したのがルーキーの2人。大城滉二と鈴木昂平だ。
内野の要を巡る壮絶なバトル!
興南高時代の2010年に甲子園春夏制覇を成し遂げた大城。バッティングにも定評がある22歳は、快足を生かした広範な守備範囲を武器に、華麗なショートストップとしてその名を轟かせた。あの巨人・坂本勇人と比較されることもあり、総合力の高さはその水準に匹敵すると述べる者もいる。
一方で、鈴木はというといわゆる「一芸枠」で入団したドラフト7位のルーキー。「一芸枠」と聞くと「?」を浮かべる者も少なくないだろうが、彼は「守備のスペシャリスト」なのだ。
“お金を払ってでも見るべき”と紹介されるほど秀逸なそのフィールディングは、大学時代から周囲の耳目を集めていた。「スペシャリト」と呼ばれるほどの期待はルーキーの彼にとって少なからずの重荷だろう。ただ、安達が離脱した今、彼の活躍を期待せずにはいられない。
福良淳一監督は二人のほかに、西武時代にベストナイン4回、ゴールデングラブ賞3回という実績を持つ中島裕之や、ユーティリティプレーヤーの縞田拓弥、さらには新外国人のモレルといった選手の名を挙げている。
中島やモレルの起用ができれば打線は厚くなり、破壊力は高まることが予想されるだけに、ファンとしては興味をそそられるが、ディフェンス面での不安は拭えない。ルーキーの活躍は球界の底上げを担うと同時に、チーム内の競争意識を高め、大きな付加価値を生む可能性もはらむ。
実際に、現状としてはルーキーの2人が直接対決の様相を呈している。
28日に行われた楽天との練習試合では、スタメンした大城が4回で4つの失策を犯し、試合中に“二軍降格”。隣接するサブグラウンドで行われていた巨人との二軍戦に途中出場することになり、大城に代わって二軍の試合に出場中だった鈴木が一軍の試合に途中出場するという珍事件が起きた。
安達が復帰した時、不動のポジションだったショートの位置に誰が就いているのか。ここから開幕までのショートを巡る争いから目が離せない。