チームを支えてきたがゆえに生じる、取り巻く環境の“甘さ”
巨人の元エースが苦しんでいる。
6日に行われたオープン戦、甲子園での“伝統の一戦”に先発すると、4回を10安打で6失点の大乱調。4回裏には阪神打線に6連打を浴び、一挙5失点と精彩を欠いた。
これがエースを張っていた数年前までならば、「オープン戦はあくまで調整」と言えたのだが、ローテーションの当落線上にいる今の内海にとっては、その一戦一戦が重要な意味を持つ。
昨季は故障にも苦しみ、わずか2勝。防御率は5.01。それでも、オフの契約更改では複数年契約のため4億円の現状維持となった。
大型契約のリスキーさを指摘する声も聞かれ、逆風に晒される元最多勝投手。だが、この殺伐とした雰囲気こそ内海が変わるチャンスなのではないだろうか。
ここ数年、背番号26を取り巻くある種の“甘さ”。これが杉内なら、2ケタ勝ちながらも高年俸や18番にはふさわしくないとディスられる日々だろう。菅野も新エースとして厳しい視線に晒され、マイコラスにしたって昨季開幕ローテ入り直後は自軍のファンから批判が噴出していた。
「でも内海は…?」
4億円左腕はこの2年間で9勝しかしていないにもかかわらず、東京ドームでは常に温かい拍手が送られ続けた。
例えば昨年8月12日のDeNA戦。本拠地で久々に先発し、6回途中4失点でマウンドを降りながら、驚いたことに試合後のヒーローインタビューには内海の姿があった。正直、見ていて違和感を感じる風景だった。
今度は若手を押しのけて、這い上がる番
もちろん、この男の残してきた実績は素晴らしいものだ。新人時代の偉大な先輩たち、桑田や上原、慕っていた高橋尚成は続々とチームを離れアメリカへ。そんな時、内海は去っていった先輩達を批難するのではなく、自ら新しいチームを作ろうとした。
派閥が蔓延していたあの頃に戻るのは絶対嫌だ。自分が若手を引っ張るんだと...。
グアム自主トレに若手投手を積極的に誘い、ハードな練習を見せてお手本になった。栄光のリーグ3連覇は、内海の存在なくして達成されることはなかっただろう。
けど、それはそれ、これはこれだ。
貢献度の高いベテラン選手を取り巻くある種の甘さは、やがて選手自身をスポイルしてしまう。
球場に登場しただけで、結果に関係なく送られるファンからの温かい拍手。そうなってしまったら、もうその先に待っているのは現役引退しかない。
内海もこの4月で34歳。松坂世代の久保裕也が退団し、気が付けば生え抜き投手最年長だ。投手陣のまとめ役、頼むぜリーダーって、引退間際のベテランじゃないんだから。プロ野球選手、数字を求められなくなったら終わりである。
4年契約の最終年、監督が代わりチームも世代交代の真っ只中。ローテの座も確約されているわけじゃない。
2016年、崖っぷちの元エース。もう若手の手本になる必要はない。
すべての若手を倒して這い上がれ、内海哲也。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)