280名の新戦力をどのように確保するのか。
「なぜ球団を増やせば、地域創生、若い人たちの夢、地域貢献につながるのか政府として検討する」
先週の衆院予算委員会、石破茂地方創生担当相がプロ野球16球団への拡大構想についてそう語った。野球メディアでも度々上がるこの話題。2年前の14年5月にもスポーツ各紙で政府の「プロ野球16球団拡張案」が一面で報じられた。
自民党の日本経済再生本部がまとめた成長戦略の第2次提言案で新たに4球団を増やすことを検討。消費税増税で落ち込むとみられる景気の回復策としても期待。提言案では本拠地候補として、北信越、静岡、四国、沖縄を挙げている。
球団拡張の資金面に関しては新規チームのスポンサーに外資参入解禁といった手もあるが、問題は選手の確保である。例えば、今の12球団2リーグ制から16球団の3リーグ制へ移行と仮定すると、新たに4球団分、それぞれ支配下選手70名の増員。つまり、計280名の選手が必要になる。
日本の野球人口が減ってる上に、少子化問題もある。果たして280名分の新戦力をどうやって確保するのか? 独立リーグから補充すると言っても肝心のプレーレベルは下がるだろう。新規ファンを開拓することに躍起になるあまり、現行ファンが球場から足が遠のく一因を作ってしまっては元も子もない。
結局、数十人単位で一定レベルの選手を確保するには、方法はひとつしかないのではないだろうか。外国人枠の拡張である。現在の助っ人1軍枠4名から6名、もしくは8名まで増やす。例えば「投手2名・打者2名」から「投手4名・打者4名」までOKといったような形で。
元メジャーリーガーだけで組むクリーンナップに助っ人エース。内野陣全員が中南米選手の多国籍軍団といったチーム作り。さらに各球団2名(投手1・野手1)までアジア国籍の選手は外国籍選手に含まれない「特別アジア枠」という形も候補に挙がるだろう。ただ、繰り返しになるがこの手の改革案にどこまでオールドファンがついて来れるのか不安要素は残る。
NPBを16球団に増やすとはこういうことだ。政治家がどれだけ躍起になってハードを整備したって、最も重要なソフト=選手が置き去りになっている感は否めない。極論、資金が足りないなら、ファンも寄付という形で貢献できる。けど、選手を用意することは不可能だ。
景気回復? 地域活性? まず語るべくは、夢でも金でもなく、現実だ。
主役の選手をどうやって揃えるのか。16球団拡張案はまずはそこからである。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)