滑り出し上々の前田健太の課題
ドジャースの前田健太が、しっかり結果を残している。
ここまでのオープン戦で2試合に先発し、5イニングを3安打、2四球、5三振、無失点。これ以上ないメジャーでの滑り出しを見せた。
1イニング当たりの投球数は15.6球。前田としては比較的多い印象を受けるが、昨季メジャーで規定に到達した先発投手78人の中でいうと32番目に位置する数字になる。
先発投手にとって、投球数を抑えることは勝ち星を挙げるために重要。これは周知の事実であろう。
特にメジャーでは、先発投手がどれだけ好投していても100球前後で降板することが多いため、日本のプロ野球以上に重要な要素となってくる。
たとえば5回までに100球前後を投じれば、2~3失点に抑えていても、交代を命じられる可能性は高くなる。そして、その時点で勝ち投手の権利を持っていたとしても、救援陣が打たれてしまうと白星はつかない。
加えて前田が所属するナ・リーグは、ア・リーグ本拠地の交流戦を除くと指名打者制がないため、前田も打席に立つことになる。どれだけ好投していても、チャンスで打席を迎えた場合、投球数が80球を超えていれば代打を送られる可能性が一気に高まってしまうのだ。
勝ち星を伸ばすカギ「打者・前田」
そこで、前田にとって勝利数を伸ばすひとつのカギとなるのが「打者・前田」がどれだけチームに貢献するか、と言う点だ。
貢献というのは、ただ打率や打点を稼ぐだけでなく、進塁が必要な場面でしっかり犠打を決められるか。相手投手に一球でも多く投げさせられるか。こういったところも大きい。
ライバル球団・ジャイアンツのマディソン・バムガーナー(過去2年・159打席で打率.252、9本塁打、24打点)のような選手は稀ではあるが、前田も広島時代の昨シーズン、自己最高の打率.194、12安打をマークして本塁打も放った。
さらに、プロ1年目の2007年にはファームで22打数8安打(打率.364)という打者顔負けの“実績”もある。メジャー1年目といえども、少なくとも打率.150、できれば2割近く打つことで、年間2~3勝は手繰り寄せることが可能なはずだ。
メジャーリーグ公式サイトやセイバーメトリクス系サイトを見ても、前田の1年目成績予測は「10~12勝」というところがほとんど。
これを高評価ととるか、低評価ととるかは意見が分かれるところだが、昨季の沢村賞を受賞した“プロ野球最高投手”としては、やはり15勝は狙ってほしいところ。
そのためには本職のピッチングだけでなく、打者としても首脳陣にアピールできるか、といったところがポイントになるだろう。
文=八木遊(やぎ・ゆう)