“投手王国”ドジャースの危機
開幕を1か月後に控えた“投手王国”ドジャースが、早くも危機に直面している。
ルーキーイヤーの2013年から2年連続で14勝を挙げるも、昨季は左肩の故障により全休した柳賢振が、再び左肩に違和感を訴えて開幕ローテはほぼ絶望的。
それに加えて先発3番手と目されていたブレット・アンダーソンが腰を痛め、手術を要するような状況にあることが判明。現地メディアの報道によると、復帰まで3~5カ月ほどかかるという。
昨季19勝を挙げたザック・グリンキーの穴は簡単に埋まらないことは百も承知だろうが、エースのクレイトン・カーショーを除けば先発陣には大きな不安が残る。
FAで加入したスコット・カズミアーはある程度計算は立つとはいえ、昨季挙げた勝利数は「7」どまり。特に8月以降は11試合に先発して1勝6敗、防御率5.22と尻すぼみの結果に終わった。
2年連続2ケタ勝利のウッドは、1年間ローテーションを任せれば2ケタ勝利は計算できるが、ローテーション5番手レベルの感は否めない。
評価急上昇中の前田はドジャースの救世主になる?
そこで、前田健太である。ここまで名前が挙がったドジャースの先発投手は全て左腕のため、右投げという利点もあるが、それでもカーショー、カズミアー、アンダーソンに次ぐローテーション4番手候補というのが前田の評価(=期待値)であった。
現地では、日本での実績から1年目は10~12勝という見方が大半だが、アンダーソンの離脱と柳の左肩不安、さらにキャンプでの前田の投球から、その期待値は日に日に高まってきている。
ドジャース首脳陣としては、ルーキーの前田に過度な期待はかけず、「ローテーション4~5番手で2ケタ勝ってくれれば御の字」と楽観的に見ていたかったはず。しかし、オープン戦でしっかり結果を残せば、「ローテーション2~3番手で13~15勝」レベルまでその期待値が上がる可能性は高い。
ここ数年、渡米した日本のエース級投手たちのメジャー1年目を見ると、ダルビッシュが16勝(9敗)を挙げるも、シーズン後半に失速し、防御率は3.90に終わった。
田中将大も開幕から16試合連続でクオリティースタート(※6回以上を投げ、自責点が3以下)をマークするなど、前半戦はサイ・ヤング賞級の活躍を見せたが、右肘の故障で長期離脱を余儀なくされ、結局20試合の登板に終わった。
現時点での前田への評価はダルビッシュ、田中の1年目のそれに比べると高いとは言えない。さらに「登板間隔」や「長距離移動」、「時差」に「メジャー球・マウンドへの対応」などなど、克服すべき課題も多い。
それでも、日本での実績と培った投球術は、田中らに決してひけをとらない。憧れつづけたメジャーのマウンドで、並み居るメジャーリーガーを打ち取る前田の姿に期待したい。