MLBでも採用初年度は判定が覆ることが多かった!?
日本のプロ野球で今季から大きなルール変更がある。本塁でのクロスプレーで危険な接触を避けるため、本塁へ走るランナーがキャッチャーに体当たりすることが禁止となるのだ。
それに伴い、キャッチャーは本塁でのタッチプレーの際に、本塁をまたがずにランナーの走路を必ず空けておかなければならない。また、ランナーにタッチする際、キャッチャーがブロックをすることも禁止となる。これらはいわゆる「コリジョンルール」という呼び方で、メディアは報じている。
春季キャンプを見ていると、各球団の、特に捕手たちが新ルールへの対応に追われているシーンをよく見た。だが、実は日本に先立ってこのルールを採用しているのがメジャーリーグだ。
2011年にサンフランシスコ・ジャイアンツのバスター・ポージーが本塁のクロスプレーで激しいタックルを受け、選手生命も危ぶまれる大ケガを負ったことがキッカケとなり、2014年からコリジョンルールが採用された。
採用された最初のシーズンはというと、本塁の判定を巡って92回ものリプレイ検証(ビデオ判定)が行われ、そのうち11回で判定が覆るなど揉めることが多かった。
中には明らかにアウトのタイミングにも関わらず、形の上で「捕手が走路をふさいだから」という理由で判定がセーフになることもあり、物議をかもすことも少なくなかった。
今回、日本の春季キャンプでも同じようなケースがすでに何度かあったようだが、公式戦に入ってもしばらくはさまざまな議論を呼ぶことが予想される。
ちなみに、メジャーでは2014年の9月にMLB機構の野球運営部門が「捕手がボールを持っていない状態で本塁をブロックしたとしても、意図的に走路を妨害した明らかな証拠がなければ、走者をセーフにしないように」と通達し。それまで曖昧だったルールに一定の基準が設けられるようになった。
その結果、昨年は本塁のクロスプレーで行われたリプレイ検証が27回まで減り、判定が覆ったのもわずか2回だけだった。覆ったケースはいずれも捕手が目に余る妨害をしていたときで、採用初年度に比べて揉めることも少なくなっている。
今季から、日本でも本塁でのプレーに対してリプレイ検証を採用するようになったが、コリジョンルールに慣れるまで1シーズンくらいはかかると考えたほうがいいだろう。
安全面を重視するルールが増えつつあるメジャーリーグ
ところで、本塁でのクロスプレー以外にも、メジャーでは二塁ベース付近でのスライディングに関しても新たなルールを採用することが正式に決まった。
新ルールには、「本塁を除き、スライディングが完了した時点で走者はベース上に留まること」、また「走者は野手との接触目的で走路を変えてはならない」というもので、これらに抵触して危険だと判断されれば、走者だけでなく打者もアウトになる。
要は、併殺を防ぐために二塁から大きく外れ、野手に向かってスライディングをすることが禁止されるのだ。
昨季、二塁ベース付近でのスライディングでパイレーツの姜正浩とメッツのテハダが大ケガを負ったことが新ルール採用のキッカケとなっているが、近年のメジャーでは安全面を重視するルールが増えつつある。
日本では、メジャーほど激しい併殺崩しのスライディングを見ることはないが、野球界の流れとしてそういった動きがあるということを頭に入れておく必要はあるだろう。
文=京都純典(みやこ・すみのり)