社会人からプロ入りした苦労人
2015年は『松坂世代』と呼ばれるゴールデンエイジの選手達が球界で話題になった年であった。館山昌平(ヤクルト)は肘の手術から復活し6勝を挙げてリーグ優勝に貢献、オフシーズンに和田毅(ソフトバンク)、藤川球児(阪神)がNPBのそれぞれの古巣に復帰、など、ファンには嬉しいニュースもあった。
一方で『世代の代名詞』松坂大輔(ソフトバンク)は日本球界復帰もシーズン未登板に終わり、巨人、オリックス、日本ハムで活躍した木佐貫洋が現役引退、村田修一(巨人)、杉内俊哉(巨人)は、キャリアワーストクラスの成績に終わるなど、球界を引っ張ってきたこの世代に、大きな翳りを感じさせる歳でもあった。
『高校組』の99年入団から、『大学組』の03年入団までに、松坂世代で逸材と騒がれた選手達のほとんどがプロ野球に入団をしている。松坂を含める高校組が入団してから6年後の05年、松坂世代最後の大物と呼ばれた久保康友が入団した。久保は関西大学第一高校で、春の選抜甲子園で松坂を擁する横浜高校との決勝に破れるも、準優勝の立役者となった。
久保は高校卒業後、大学には進学せず、社会人チームの松下電器に入社をしたが、故障にも悩まされ、入社当初は他の『松坂世代』の同期達がプロ野球や大学で活躍する中、目立つ存在になることはなかった。しかし5年目あたりから本来の力を発揮し、04年のドラフト会議でロッテに自由獲得枠で指名を受け、05年に遠回りした最後の大物は『松坂世代』が各チームで既に活躍するプロ野球の舞台に立つことになった。
久保の凄さは、コンスタントにチームの戦力であり続ける「地道力」とでも言うべきものではないであろうか。入団した05年からロッテで4年間、09年途中から阪神で5年間、14年からDeNAで2年間、計11年で二ケタ勝利は3度ではあるが、主に先発ローテーションに入っていた8年間で5勝以下だったのは12年の1シーズンのみ。期待を大きく上回らないが、裏切りもしない。
松坂世代も、16年は勝負の歳を迎える選手が多い。故障も多い年齢にさしかかり、手術明け、NPB復帰の選手が目に付き、成績にも波がある選手も多い。
そんななか、今年も久保には心配の種がない。
選抜を沸かせた世代最後の大物。久保は、最後尾からじわじわと世代に追いつき、若さや勢いが失われつつある松坂世代のなかで、今や世代を先頭集団で引っ張る「世代最初の大物ベテラン」になりつつあるのかもしれない。