減少した死球
野球に死球はつきもの。これまでも死球がらみで大乱闘になったことが何度もあった。
1986年には、近鉄のデービスが西武・東尾から死球を受けて激高。マウンドへダッシュし、ぶん殴ったのだ。デービスには出場停止10日間の処分が下された。
翌87年には、巨人のクロマティが中日・宮下から死球を受けると、マウンドへ駆け寄り“グーパンチ”を一発……。両軍入り乱れての大乱闘となった。
この乱闘の際には、中日の星野監督が巨人の王監督をにらみつけ、握りこぶしを示しながら「グーで殴っただろう」と猛抗議。結局、クロマティは退場処分となった。
もちろん、いいことではないのかもしれないが、こういった乱闘シーンは見ている側としては面白かったし、テレビ番組の「プロ野球珍プレー好プレー」などでも、ひとつの“特集”として取り上げられていた。
その点、最近ではプロ野球の乱闘シーンはめっきり減った。「ケンカなんかやらない。ケンカは野蛮人のすること」などと現代の若者が考えるようになってきたという向きもあるが、プロ野球選手がおとなしくなり、つまらなくなったと感じる人も少なくないのではないか。
乱闘の原因になることといえば、死球がほとんど。では、与死球の多い投手は誰なのか。昨シーズンの与死球ランキングを見てみよう。
【2015年・与死球トップ3】
<パ・リーグ>
1位 11個 牧田和久(西武)
1位 11個 吉川光夫(日本ハム)
3位 9個 中田賢一(ソフトバンク)
<セ・リーグ>
1位 11個 藤浪晋太郎(阪神)
2位 8個 アーロン・ポレダ(巨人)
2位 8個 高木勇人(巨人)
両リーグとも、与えた死球は11個が最多だった。ちなみにシーズン最多与死球は、1968年に森安敏明(東映)が記録した22個である。ただし、森安は1970年に「黒い霧事件」に巻き込まれ、永久追放。1998年に病死した。
ちなみに、通算与死球のトップ5を見てみると、以下のようになる(※所属は最終所属球団)。
【通算与死球トップ5】
1位 165個 東尾 修(西武)
2位 144個 渡辺秀武(広島)
3位 143個 坂井勝二(日本ハム)
3位 143個 米田哲也(近鉄)
5位 142個 仁科時成(ロッテ)
あの伝説の「400勝投手」・金田正一(巨人)は、通算与死球数72個で、なんと上位40人にも入っていない。現役投手では、歴代32位の久保康友(DeNA)で86個、歴代37位の涌井秀章(ロッテ)で82個と、上位40人には2人しかいないのだ。
死球王は東尾で決定。これは意外ではないが、現役投手の死球数が少ないことには驚いた。頭部への死球で即危険球退場など、ルールが変わったことは確かだが、投手の基本は「内角をいかにえぐれるか」にあると思う。その醍醐味だけは忘れないでほしい。