流動的になりそうな今季のソフトバンクの中軸
1990年~1992年の西武以来となる「日本一3連覇」を狙うソフトバンク。このオフは目立った補強もなく、ドラフトで指名したのも6人全員が高校生(※育成ドラフトは除く)と将来を見据えたものとなった。
投手陣の顔ぶれに大きな変化はないが、打線は少し変わる見込みだ。
昨季のソフトバンク打線は3番・柳田悠岐から4番・内川聖一、5番・李大浩、6番・松田宣浩までの中軸がほぼ固定されていた。中軸の4人でチーム全体の約6割となる得点を稼いだが、李大浩がメジャー移籍のために退団。ここまでのオープン戦を見る限り、今季は柳田、内川の3、4番に変わりはないものの、5番以下は松田や長谷川勇也、バーバロ・カニザレスを状況に応じて起用するようだ。
中軸を固定する一方、昨季は1番に6人、2番には8人の選手を起用するなど、1、2番に確固たるレギュラーがいなかった。高田知季や牧原大成といった次世代を担うであろう選手たちにも実戦での経験を積ませたが、今季は1、2番をある程度固定するかもしれない。
19日までのオープン戦13試合で、スタメン起用した1番打者は延べ6人。川島慶三の5試合が最多で、以下福田秀平が4試合、長谷川、上林誠知、明石健志、本多雄一が1試合ずつ。川島と福田が主に起用された。
また、1番打者に以上に起用法がハッキリしているのが2番だ。オープン戦では2試合を除き、本多をスタメンで起用した。ほかの打順はメンバーを変えても、2番・本多、3番・柳田という形はほとんど崩していない。
プロ入りワーストの成績に終わった本多
2010、2011年は全試合に出場。2年連続盗塁王にも輝いた本多だが、ここ2年はケガに苦しんだ。
2014年は8月に死球を受け、左手の指を亀裂骨折。日本シリーズには間に合ったが、スタメン出場はならなかった。
昨季もオープン戦こそ打率.311と好調だったが、4月の試合で一塁を駆け抜けた際に右足首を痛めて途中交代。右足関節の捻挫だったが、シーズン通算で61試合の出場に留まり、打率.228に終わった。出場試合数はルーキーシーズンの37試合に次ぐ少なさとなり、打率はプロ入りワーストだった。
迎えた今季、本多はオープン戦全試合に出場し、打率.395、12球団最多の7盗塁を記録している(※19日時点)。数字を見ても、スピードあふれる本多らしいプレーが戻ってきたことがうかがえる。
打球の方向を見ても、レフト方向に43%、センター方向に30%、ライト方向に27%。逆方向への当たりが多くなっているが、極端な偏りは見られない。
凡打の内容は、ゴロアウトが14でフライアウトが4。走者の進塁を求められることが多い2番打者としては、フライよりもゴロを打つほうが望ましい。その点、本多は2番として適任と言えるだろう。
本多を2番に置くメリットはほかにもある。
かつてのスピードを取り戻した本多が出塁すると、相手バッテリーは盗塁を警戒して打者への配球が速球中心になることが予想される。しかし、本多のあとを打つのは柳田だ。速球中心になれば柳田に打たれる確率が高まり、かといって変化球を交えれば本多が走ってくる。相手バッテリーは難しい選択を迫られることが増える。
李大浩の移籍により、昨季よりは少しパワーダウンした感があるソフトバンク打線。しかし、本多の復活がこれまでとは違った面で相手の脅威となりそうだ。
文=京都純典(みやこ・すみのり)