好調が続く巨人
由伸巨人が好調だ。
9試合を終え7勝2敗。開幕から3カード連続の勝ち越し。延長戦は3戦全勝と接戦にも強い。チーム防御率3.07はリーグトップ。そしてなにより昨季貧打に泣かされた打撃陣もチーム本塁打11は12球団トップである。
その原動力となっているのが新外国人選手のギャレットだ。メジャー122発男は開幕から全試合「4番ファースト」としてスタメン出場。打率.313、4本塁打、9打点、OPS1.140と4番打者として申し分のない働きを見せている。一塁守備は不安定だがそれを補う圧倒的な存在感。今の巨人はチーム再構築の時期である。
1年前の開幕戦スタメンは「2番井端・4番阿部・5番村田・6番由伸」というメンバーだった。それが今季は「4番ギャレット・5番クルーズ」だ。来日1年目で開幕戦先発4番に座った外国人選手は球団初の快挙。それだけこの新助っ人に求められる役割は大きい。
そして、開幕から9試合を終えギャレットの好調が巨人長年の課題を解消しつつある。阿部慎之助のチームからの脱却である。原政権時代は背番号10の存在が偉大過ぎるがために依存度も高かった。捕手としての存在感はもちろん、頼れる左の長距離砲が阿部以外にいないチーム事情。阿部がスタメンからいなくなると攻守ともに一気にパワーダウン。だから、体調的に捕手が無理なら一塁手に転向させてまで阿部にこだわったのである。
だが、今季はギャレットが左の大砲として4番に定着した。同時に中軸がしっかりすれば下位打線の8番打者にはそこまで打撃力を求めなくなるという相乗効果もある。開幕からスタメンマスクを被る小林誠司はバッティングがレギュラー定着への大きな課題とされてきたが、これで小林の打撃面の負担も軽減させることができるだろう。
ベテランの阿部や相川が二軍で調整中の今シーズン、しばらく正捕手は小林誠司に任せることになるだろう。ただ3年目の26歳が阿部慎之助の代わりをひとりでやるなんて無理だ。今こそ求められるのは「アベのワリカン」。「4番阿部」と「捕手阿部」を分けて考える。そして4番打者はギャレットに託せる目処がついた。もう捕手に阿部の打撃力を求めなくてもすむ。つまり、ギャレットの活躍が「阿部のチーム」からの脱却のきっかけとなったのである。
昨季は固定できずに8名の選手で回した巨人の4番。もしこのまま今季終了までギャレットがひとりで「4番ファースト」を守り続けることができたら、由伸巨人の初優勝はぐっと現実味を帯びるだろう。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)