アクシデント降板以外はすべて7イニング以上投げる安定感
交流戦前最後のカードで訪れた、パ・リーグ首位攻防の3連戦。ゲーム差「3」で迎えたロッテは少しでも差を詰めておきたいところだったが、ホームで3連敗を喫し、両者の差は「6」にまで広がった。
近年の交流戦では無類の強さを発揮しているソフトバンク。早ければ6月上旬にもマジック点灯か、などという話も出てきており、ロッテが交流戦で失速しようものならパ・リーグの灯火が消えてしまいかねない。
そんな中、ロッテのカギを握るのが、安定感が光る3年目の右腕・石川歩だ。
2014年のパ・リーグ新人王に輝いた男は、プロ入りから2年連続で2ケタ勝利をマーク。いまや先発ローテーションの一員として欠かせない存在となっている。
今シーズンは首痛で一時戦列を離れたが、ここまで7試合の登板で4勝2敗。離脱していた影響で規定投球回は割ってしまったが、現在の防御率1.30はパ・リーグの“隠れ1位“なのだ。
ここまで先発した7試合中6試合で7イニング以上を投げ、かつ2失点以下に抑えるという安定感が光る石川。5イニングで降板した24日の日本ハム戦は、血豆ができたことによる大事をとったためで、投球内容は5回を無失点と申し分なかった。先発投手の責任を十分に果たしていると言っていいだろう。
石川の成績を見ると、昨年までと比べて今年は奪三振が少なくなっている。2014年の奪三振率は6.24で、昨年は6.35だったが、今年は4.28。それでいて与四球率は2014年が2.08、昨年が1.71、そして今年は2.05と大きな変化はない。昨年までと比べ、打たせて取るピッチングになっていることが数字から見えてくる。
BABIPとFIPで気になる数字が...
このように、先発投手として文句なしの成績を残している石川だが、気になる数字も存在する。
セイバーメトリクスの中に、「本塁打以外でグラウンドに飛んだ打球の安打になる割合」を示した「BABIP」という指標がある。フェアゾーンに飛んだ打球が安打になるか、アウトになるかは投手/打者の能力だけでは判断ができないということから生まれたもので、ざっくり言うと“運任せ”な部分を数値化したものになる。
一般的には.300前後が平均と言われおり、石川のBABIPは2014年が.318、昨シーズンは.315となっていた。ところが、今シーズンは.253という数字を記録しており、平均と言われる.300を大きく割り込んでいる。つまり、今シーズンの石川は「本塁打以外でグラウンドに飛んだ打球の安打になる割合」が低く、もっとかんたんに言えば「運が良い」ということなのだ。
その一方で、野手の守備力に関係なく、被本塁打や奪三振、与四死球といった投手の責任だけによる結果から投手の能力を計る「FIP」という指標を見ると、2014年が3.14、昨シーズンが3.21だったが、今シーズンは3.62と下がっている。
ここで、石川の3年間の防御率と「BABIP」、「FIP」をまとめて見てみよう。
【石川歩の3年間】
2014年 防御率3.43 BABIP .318 FIP 3.14
2015年 防御率3.27 BABIP .315 FIP 3.21
2016年 防御率1.30 BABIP .253 FIP 3.62
このように、リーグトップに相当する防御率を記録している今シーズンの石川であるが、純粋な投手の能力を計る指標ではプロ入りで最も悪い数字となっている。奪三振が少ないためFIPは高くなりやすくなるとはいえ、昨シーズンまでと比べても高いというのは少し気になるところだ。
また、BABIPが極端に良い選手というのは、打球が野手の正面をつくことが多かったり、“運”に助けられたりしている部分もある。もちろん、ロッテ野手陣の守備力が上がったことや、石川の打たせて取るピッチングに磨きがかかったとも言えるし、あくまでも数字上の話なのだが、これから石川のBABIPの数値がどのように変化していき、その結果から投球にどんな影響が出たかを注視する必要がある。
ここまで5勝を挙げているエースの涌井秀章とともに、2本柱としてロッテの投手陣を支えている石川。安定して7イニング以上投げられる先発投手がローテーションに二人もいることは、長いシーズンを戦うなかで大きなプラスだ。
ソフトバンクの独走、3連覇を阻止するために、石川のピッチングにかかる期待は大きい。
文=京都純典(みやこ・すみのり)