球団史上最長試合で決勝のホームを踏む!
昨季までは、プレー面よりもそのキャラクターに注目が集まることが多かったブルージェイズの川崎宗則が、チーム内での存在感が増してきている。
今季もマイナー契約からスタートした川崎だが、6月17日に今季2度目のメジャー昇格を果たすと、23試合連続でスタメン出場。15日現在、54試合に出場し、打率.273。昨季まで2年間のメジャー通算打率.218から大きく成績を上げている。長打率もメジャー1年目の.202から昨季は.308、そして今季は.313とシーズンごとに上げている。
8月10日(日本時間11日)のタイガース戦では7回に代打で出場。試合は同点のまま延長に突入し、川崎は延長19回裏に途中出場ながら7打席目を迎えた。川崎は、タイガース8番手ポルセロのアウトコース沈む変化球をすくってセンター前ヒットで出塁。3番バティスタのタイムリーで、球団史上最長の6時間37分の試合に決着をつけるサヨナラのホームを踏んだ。
パワーがあるわけではなく、圧倒的なスピードがあるわけでもない川崎が重宝される理由は、言葉は悪いが使い勝手の良さにある。日本のプロ野球もメジャーもベンチ入りできる人数は25人と決められている。しかし、日米でちょっとしたちがいがある。日本の1軍登録枠は28人で登板予定のない先発投手はベンチから外れるが、メジャーではメジャー枠、つまり1軍登録枠も25人しかない。登板予定のない先発投手もベンチに入るため、試合に出られる野手は日本よりも2、3人少なくなる。
そのような状況でベンチにいて助かる野手は、あらゆる起用法ができる選手だ。川崎は、セカンド、ショート、サードを守ることができ、打ってもクリーンアップ以外すべての打順を経験している。スタメンで出場することがあれば、10日のタイガース戦のように途中出場でも結果を残す。がっちりとレギュラーをつかんでいるわけではないが、ブルージェイズのベンチに欠かせない存在となっているのだ。
メジャー1、2年目はマイナー暮らしが多かったものの、3年目にはレギュラーではないがメジャーの戦力として確固たる地位をつかむ。この流れは、かつてカージナルスなどに所属し2度のワールドシリーズチャンピオンに輝いた田口壮選手と重なる部分が多い。
力強さ増しライナー率が向上 ただし不安は高いBABIP……
川崎のバッティング面で変わった部分といえば、昨季までと比べて今季はフライ率が下がった点があげられる。ゴロアウトとフライアウトの比率を示すGB/FBが昨季の2.87から今季は4.11に上昇。打球をより転がすようになった。フライの打球が昨季の20.2%から13.3に下がるかわりに、ライナー率が昨季の21.8%から31.9%に上がっている。ボールを強く叩けるようになった証と見ていい。
ただ一方で、不安要素もある。本塁打を除くグラウンド内に飛んだ打球が安打になった割合を示すBABIPが.353と高い点だ。一般的に、BABIPは.300前後が平均とされ.300を大きく超えている場合は、運にも助けられているとされる。ゴロが野手の間を転がる頻度が、ほかの選手と比べて高いというわけだ。今後、川崎の打率が急降下したら打撃技術以外の運の要素もあると考えていいだろう。
ブルージェイズは現在、アメリカンリーグ東地区で首位のオリオールズに9ゲーム差の2位につけている。地区優勝は厳しい状況だが、地区優勝以外の勝率上位2チームが獲得できるワイルドカード争いでは4ゲーム差とまだ充分チャンスがある。
田口壮もメジャー3年目に初めてワールドシリーズに進出したが、川崎も同じ道を歩むことができるだろうか(数字は21日現在:日本時間22日)
文=京都純典(みやこ・すみのり)