空振りをしない投手が嫌がる打者
投手が打者を打ち取る方法は、三振、ゴロアウト、フライアウトの3つだ。三振は最も安全な方法で、ゴロは野手によるエラーのリスクは高まるものの、フライのように一歩間違えばホームランという危険性はない。逆を言えば、投手から見て三振をしない打者ほど嫌なものはない。
メジャー3年目を迎えたロイヤルズの青木宣親は、投手から見て嫌な打者のひとりと言えるだろう。喫した三振の数は、規定打席に達しているメジャーの選手の中で4番目に少ない37個。スイングした時、バットに当てる確率(コンタクト率)はメジャー7位の90.4%。つまりこれは、10回スイングして1回しか空振りをしないということである。
メジャー移籍後のコンタクト率を見ても2012年が88.4%、昨季が92.1%と高い数値をキープしている。
ちなみに、イチロー(ヤンキース)のコンタクト率は、最も高いシーズンが、メジャーのシーズン最多安打を更新した2004年の91.7%で、メジャーでの平均は89.2%。このことからも、青木のコンタクト率の高さはわかるのではないだろうか。
青木のもうひとつの特徴はゴロの打球が多いこと。ゴロ率63.6%はメジャー3位だ。メジャー移籍後のゴロ率は2012年が55.4%、昨季が60.4%と年々上がっている。
ゴロ率でもイチローと比較してみよう。コンタクト率と同じく2004年の63.7%が最も高く、メジャーでの平均ゴロ率は55.5%である。一発長打こそないが、打球を転がして走者を進めてほしい時、青木のような打者がいるのはベンチとしても心強いだろう。
ライナー率の向上に見るMLBでの青木の進化
三振が少なく、ゴロの打球が多い。こう書けばコツコツと当てているイメージが浮かぶかもしれないが、別の数字を見れば青木の変化を感じ取ることができる。
それはライナー率だ。メジャー初年度の2012年、青木のライナー率は16.9%だったが、昨季は17.7%、今季は19.9%まで上がった。逆に下がっているのがフライ率で、2012年は27.7%だったのが、昨季は21.9%、今季は16.5%。一般的に、ライナーの打球が最もヒットになりやすいとも言われており、その裏づけを実行するように、強い打球を打てている証でもある。
今季、青木のこれまでの成績は打率.263、長打率.334、1本塁打とメジャー3年目で最も低い。しかし、コンタクト率の高さをキープしながら、ライナー性の強い打球を多く打てるようになってきたことも数字から見て取れる。今のところ、長打の数に表れてはいないが、中距離打者として活躍する日もそう遠くないかもしれない。
(数字はすべて日本時間の8月8日現在)
文=京都純典(みやこ・すみのり)