完封で12勝目をマークし投手“三冠”
「絶景です!」。お立ち台に上がったヒーローは、おなじみのフレーズを口にした。8月12日、石川歩(ロッテ)は首位・ソフトバンクを相手に2安打完封勝利。12勝目をマークし、相手先発・和田毅と並んでハーラーダービートップに躍り出た。
マイペースで控えめな性格もあってか、石川の活躍が大きく報道されることは多くはない。だが、今季の石川の成績はもっと騒がれなければおかしいほど抜きん出ている。防御率1.59は、2位・大谷翔平(日本ハム)の2.02を大きく引き離し断トツのトップ。防御率といえば、今季開幕からメディアを賑わせている菅野智之(巨人)が思い浮かぶが、その防御率1.77をもしのぐ数字なのだ。勝利数に加え、リーグただひとりの2完封も合わせれば、現在、投手“三冠”である。
石川といえば、高い総合力が生む安定感を評価されている投手。もちろん制球も安定している。しかし、プロ3年目の今季は、そのもともと高い制球力がさらに飛躍しているのだ。注目したいのは、9イニングでいくつ四球を与えるかという指標である与四球率。
「無駄な四球を出すな」という常套句を体現する投手
過去2シーズンの与四球率は、順に2.08、1.71。それでも十分にトップレベルの数字であるが、今季はなんと1.16にまで向上している。以下は、規定投球回到達者のなかでの与四球率ランキングだ。いかに石川の数字が凄いかは一目瞭然。まさに、断トツである。
【パ・リーグ与四球率ランキングベスト5】
1 石川歩(ロッテ)
与四球率:1.16
投球回124.1
四球数:16
2 美馬学(楽天)
与四球率:1.92
投球回:108
四球数:23
3 有原航平(日本ハム)
与四球率:率1.92
投球回:126 2/3
四球数:27
4 則本昂大(楽天)
与四球率:2.13
投球回:152
四球数:36
5 塩見貴洋(楽天)
与四球率:2.16
投球回:108 1/3
四球数:26
今季の石川は、124回1/3を投げて与えた四球はわずかに16。12日のソフトバンク戦でも当たり前のように1四球でまとめた。四球を出さなければ、当然、球数も減り、長いイニングを安心して任せることができる。首脳陣、中継ぎ陣からすれば、“先発の鑑”のような投手なのだ。
さらに、四球を出さず、テンポもいい石川の投球は、攻撃陣のリズムを生むことにもなる。それが、4.43というリーグ4位の高い援護率にもつながり、ひいては勝率.800(12勝3敗)という自身の高勝率をも呼び込んでいるのだろう。
「無駄な四球を出すな」とは野球における常套句のひとつ。石川の投球は、まさにそれを体現しているのだ。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)