好調をキープしていたイチローが...
現地時間8月7日、ついにメジャー通算3000安打の快挙を達成したイチロー。開幕前には「ピート・ローズ超えの『日米通算4257安打』はあっても、『MLB通算3000安打』までは厳しいのでは...」という見方も少なくなかったが、見事に彼らの期待を裏切ってくれた。
しかし、金字塔を打ち立てた後のイチローはというと、それまでの好調が嘘だったような下降の一途を辿っている。
6月下旬の時点で.350を超えていた打率は、3000安打達成の時点で.317まで下落。その後はさらに調子を落とし、一時は.288まで落ちてしまった。
現地4日のインディアンス戦では久々となるマルチ安打を放つなど、復調の気配も伺わせているが、先発のサラザール相手には3打数無安打で2三振と全く手が出なかった。
打率の下降とともに激増した三振
何かがおかしい……。そこで、メジャー通算3000安打を達成した先月7日までの試合と、その翌日以降の数字を洗い出して比較してみた。主な数字は以下の通りだ。
<開幕~8月7日まで>
打率.317 出塁率.390 四球率10.3% 三振率9.5% 空振り率4.7%
<8月8日~9月3日>
打率.217 出塁率.280 四球率6.5% 三振率16.9% 空振り率8.8%
(※Fangraphsより抜粋)
こうしてみると、打率と出塁率がそれぞれ約1割下がり、三振率そして空振り率が大きく悪化していることがわかる。空振り率は8.8%と2倍近くに増えており、自己ワーストを記録した2012年の7.2%よりも悪い数字だ。
ここ2試合は8打数4安打と当たりを取り戻しつつあるが、4日の試合ではスイングした12球のうち5球が空振り。率にすると41.7%というイチローらしからぬ数字だった。
また、空振りした5球のうち3球はボール球に手を出しており、5球すべての空振りを奪われたサラザールに対しては全くタイミングが合っていない。
今季も残すところ25試合
それでも、一時は勝ち越し打となる二塁打を放った9回の打席では、2ストライクと追い込まれてから4球連続でファウル。粘って粘って甘い球を仕留める、“らしさ”も見せた。
しかし、たとえ空振りが多くても安打が生まれていれば心配ないのだが、この1か月は打率も大きく下げている。今季も残すところ25試合...。イチローのV字回復はあるのだろうか。
「3000安打」という一つの大きな目標を達成したことで、イチローといえども一定レベルの緊張感、集中力が途切れたことは否めないだろう。また、チームはまだプレーオフ進出の可能性を残しているとはいえ、インディアンスに3連敗を喫したことでその道のりは厳しくなったと言わざるを得ない。
イチローにとっては4年ぶり自身3度目となるポストシーズンが遠のいたとはいえ、目の前のことに集中するという“自分の打撃”に徹する姿勢は今後も何ら変わらないだろう。
文=八木遊(やぎ・ゆう)