コラム 2016.09.05. 20:00

【白球つれづれ】高校球界投手陣はビッグ5だ!堀瑞輝、大化けの可能性

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ここ一番の勝負所で快刀乱麻の投球を見せた侍ジャパンU-18の堀瑞輝(広島新庄)

白球つれづれ~第23回・堀瑞輝~


 異議あり!表彰選手は間違いでしょう!4日まで台湾で行われた野球のU-18アジア選手権は高校日本代表が決勝で台湾を破り2年ぶり5度目の優勝を飾った。終了後の表彰ではMVPに納大地(智辯学園)、最優秀防御率と最多勝利に寺島成輝(履正社)ら日本勢が順当に選出されたが、どう見てもこの場に呼ばれるべき男の名がなかったのは残念でならない。

 ここ一番の大勝負の場面で快刀乱麻の投球を見せた堀瑞輝(広島新庄)こそ今大会で最も輝いた投手である。決勝打の納選手をくさすつもりはない。だが堀なくしてアジア王者の座はなかったとだけは断言できる。

 今年の高校球界は投手の豊作年だ。夏の甲子園を前に注目を集めたのは「ビッグ3」すなわち寺島成輝、藤平尚真(横浜)、高橋昂也(花咲徳栄)の3投手だった。いずれ劣らぬ怪腕にプロ各球団のスカウトはドラフト1位指名確実と声を揃えた。しかし、甲子園の本番で最も高い評価を得たのは作新学院の優勝投手・今井達也だ。しなやかな右腕から繰り出されるストレートは150キロ台をマーク、いつのまにか「ビッグ4」の名が定着していった。

 ところが、である。アジアNo.1の座を賭けた台湾の舞台でその「ビッグ4」よりも日本から駆け付けたスカウト陣を驚かせたのが堀だ。決勝の台湾戦。6回から先発の今井を救援すると4イニングを無安打8奪三振の快投で完封リレーを完成させた。今大会の戦いを振り返ってみると監督の小枝守がいかに堀を頼みにしていたかがわかる。


価値ある2つの救援


 日本以外に韓国、台湾、中国、香港、インドネシア、フィリピン、タイの7カ国が参加した大会は実力差が明らか。香港とインドネシア、フィリピン、タイは実力不足で、中国がそれよりは上位だが実質的には日本、韓国、台湾の三つ巴の戦いだった。

 この重要な台湾との予選リーグと決勝の2試合はいずれも今井と堀のリレーで完封。決勝進出を賭けた韓国戦には高橋が先発し、きわどい場面で堀が救援して三振の山を築いた。

 同じ無失点でも、香港、中国相手に先発した寺島より強豪国相手に重要な場面でいずれも救援し、9回3分の1を被安打1の18奪三振で投げ切った堀のピッチングがいかに価値のあるものだったかがわかるだろう。

 いずれも1メートル80センチ台で150キロ近いスピードを誇る「ビッグ4」に対して堀も負けてはいない。1メートル77センチと若干小柄ながら今大会では自己最速の148キロをマーク。何より伝家の宝刀・スライダーは切れ味抜群だ。


解説陣“お墨付き”の決め球でドライチ候補に?!


 「あのボールはプロでも通用すると思う」と決勝の解説を務めた元横浜高の名将・渡辺元智が絶賛すれば、米大リーグ・アストロズの大慈弥功(おおじみいさお)環太平洋担当部長も「(打者の手元で)消えるスライダー。ストライクゾーンにきっちりコントロール出来ればすぐにプロの一軍でも働ける」と高評価を与える。今や「ビッグ5」の声さえ聞かれるようになった。

 堀の将来性を考えたとき、格好の参考となる先輩が2人いる。1人は楽天の守護神である松井裕樹。1メートル74センチの小柄ながら高校時代から折り紙付きのスライダーを駆使し、入団2年目からストッパーの座を勝ち得ている。もう1人は文字通り、高校の先輩である田口麗斗(巨人)だ。こちらも1メートル71センチの身長ながら得意のカーブやスライダーを生かして3年目の今季は目下、9勝をあげて先発ローテーションの一角を確保している。

 「海外で僕のスライダーが通用したのはいい自信になりました」と堀はプロへの挑戦に手ごたえを感じ取っている。夏の甲子園時点では「ビッグ4」よりはワンランク下でドラフトでも2~3位指名あたりが有力と見られてきたが「台湾の奇跡?」で1位指名まであり得る情勢となってきた。

 赤ヘルの優勝はもう秒読み。ドラフトでも広島新庄のエースから目が離せない。


文=荒川和夫(あらかわかずお)
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