投球スタイルを変えて初の二ケタ勝利をマーク
9月9日のロッテ戦、完投で11勝目をマークした菊池雄星(西武)が進化した姿を見せつけている。高校ナンバーワン左腕として大きな期待を背負って西武に入団して7年目。2013年、2015年には9勝を挙げたものの二ケタ勝利にはあと一歩及ばず、過去2シーズンは負け越したこともあって伸び悩みを指摘されることも少なくなかった。
ところが、今季は二ケタ勝利の壁を打ち破ったばかりか、防御率も2.36と、2014年の3.54、2015年の2.84から格段に向上。規定投球回にはわずかに届いていないものの、先発陣の不調が目立つチームのなかにあって、菊池の奮闘が光っている。
その進化に大きな役割を果たしたのが女房役・炭谷銀仁朗の存在だ。今季は自身初の開幕投手に指名されるなど、首脳陣から大きな期待を寄せられていた菊池だが、4月を終えた時点で1勝4敗。
昨季までの菊池の最大の武器と言えば、柔軟な肩の可動域をフルに生かした最速157キロの速球。ところが、菊池は自身の投球スタイルを大きく変化させた。
スライダーでの奪三振数が直球を逆転
昨季と今季の球種別の投球配分を比較してみよう。投球全体に占める変化球の割合は、昨季の約39%に対し、今季は約45%に増加。なかでも、勝負球に変化球を選択する割合が大きく増加している。昨季の奪三振は122だが、そのうち約6割をストレートで奪っていた。ところが、今季はここまでの112奪三振のうちストレートで奪ったものは約32%と半減。代わりに、スライダーでの奪三振が約28%から約44%に激増し、球種別のトップになっているのだ。
対戦相手のなかには昨季までの“豪速球の菊池”のイメージが残っている。だからこそ、変化球と直球の割合や使う場面を変えることで、どちらもより効果的なボールとなっているのだろう。9日のロッテ戦でも、最後の打者となった角中勝也をニゴロ併殺打に仕留めたのはスライダーであった。この日も奪った併殺は5。新たな投球スタイルでロッテ打線を翻弄してみせた。
“進化後”の菊池は、5月12日の楽天戦での敗戦を最後に負けなしの9連勝。もちろん、今後は、生まれ変わった菊池を他球団も徹底的に研究してくるだろう。来季もこのまま勝ち続けることはそう簡単ではない。とはいえ、5位に沈むチームにとって、菊池の進化、投球の幅の広がりは、来季へとつながる大きな収穫のはずだ。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)