激しいデッドヒートの陰で...
今シーズンのパ・リーグと言えば、何と言っても最終盤までもつれ込んだ日本ハムとソフトバンクの優勝争い。激しいデッドヒートの末に、日本ハムが世紀の大逆転優勝を成し遂げた。
しかし、振り返ってみると、3位以下の4チームとこの“2強”の差は歴然。早すぎる終戦を迎えたチームも少なくない。
下位に沈んだ球団は、戦力の整備が急務。これができなければ、来季以降も同様に苦しい戦いが待っていることだろう。
希望が見えた打線
梨田新体制の初年度となった楽天の2016年はどうだったのだろうか。
開幕直後は4月10日時点で8勝4敗1分という好スタート。ところが、そこから6連敗を喫すると、5月にも9連敗を記録。結局、首位の日本ハムから25ゲーム差の5位でシーズンを終えた。
梨田監督は昨年の就任会見で『最低でも勝率5割』を目標に掲げていたが、終わってみれば「16」もの借金を抱えていた。それでも、2015年の借金「26」から「10」減らしたことは、現有戦力から見れば上出来だったのではないだろうか。
借金を「10」減らすことができた要因としては、前年の463得点から544得点と「81」もの上積みに成功した打線にある。
ポイントとしては外国人打者が1人を除いて軒並み“当たり”だったこと、そして新人・茂木栄五郎の活躍が大きかった。
ウィーラー、ペゲーロ、アマダー、ペレスの4人はのべ254試合に出場し、51本塁打、148打点をマーク。年間通しての活躍というとウィーラーに限られるものの、4人の年俸総額が1億円強(推定)ということを考えれば、外国人野手のコストパフォーマンスは12球団随一だったと言っていいだろう。
そして新人王最有力とも言われている茂木も、9月だけで5本塁打を放つなど、1年目から期待以上の活躍を見せたと言える。
投手陣の整備ができればAクラスも!
その一方で、投手陣には大きな課題が残った。
防御率は前年の3.82から4.11に悪化。シーズンを通して救援陣が打ち込まれる場面が目立った。
特に左のリリーフに限って見ると、前年の3.18から4.71へと大きく防御率を悪化。ストッパーの松井裕樹と金刃憲人を除けば8.45という散々たる成績である。
いまになって考えると、昨年のドラフトで指名した9人(育成枠を含む)のうち投手が5位の石橋良太だけだったことも大きい。ブルペンの再整備がこのオフの最重要課題となるだろう。
対して先発陣は絶対的エース・則本昂大を筆頭に、美馬学、塩見貴洋と3本は確立。そこに最終盤で存在感を見せた安楽智大や、先発再転向の噂が絶えない松井裕樹、さらに西武からFA宣言が濃厚ともいわれる地元・仙台市出身の岸孝之が加わるようなことがあれば、ソフトバンクにも匹敵するローテーションが完成する。
どのチームにも共通することではあるのだが、FAやドラフト、そして外国人という3つの補強次第では、来季の楽天は十分Aクラスも狙えるチームになり得る。
近鉄(2001年)と日本ハム(2009年)をリーグ優勝に導いた経験を持っている梨田監督だが、2度の優勝はいずれも就任2年目で成し遂げた。
今回も1年目にしっかり戦力を把握し、勝負の2年目へ――。このオフ、そして来季のパ・リーグは梨田楽天から目が離せない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)