2年前は無安打に終わり最後の打者に
10月12日からいよいよ日本シリーズ進出をかけた決戦の幕が上がる。今季、圧倒的な独走劇で25年ぶりのリーグ優勝を決めた広島は、2014年以来のCSに臨む。初めてCSに進出した2013年は、ファーストステージで阪神を2勝0敗で下したものの、ファイナルステージでは巨人にアドバンテージを含む0勝4敗で完敗。
そして、2014年のファーストステージでは、人一倍悔しい思いをした男がいる。今季、大ブレークを果たした鈴木誠也だ。2年前の鈴木はプロ入り2年目の20歳。主に代打で起用されてきっちりと結果を残し、打率が3割を超えたシーズン最終盤にはスタメン出場も増えていた。
出番が回ってきたのはファーストステージ第2戦。前日の第1戦は、エース・前田健太が6回1失点と好投したものの、メッセンジャー、呉昇桓の前に打線が沈黙。0-1で破れ、もう後はない。迎えた第2戦、鈴木は「7番・右翼」で先発出場を果たした。
しかし、レギュラーシーズンとは注目度が全く異なる大舞台に初めて立った若き日の鈴木は持てる力をまるで発揮することができなかった。2回、5回と凡退し、7回には一死満塁という、この日、広島最大のチャンスで打席が回ってきた。しかし、能見篤史のチェンジアップを引っ掛け、結果は三ゴロ。さらに、0-0のまま迎えた最終12回には、二死一塁の場面で中飛に倒れ、最後の打者となってしまった。
悔しさを胸にチームで最も怖い打者に成長
結局、この試合での鈴木は5打数0安打。しかも、4度も走者がいる場面で打席に立ったにもかかわらず、進塁打1本すら打てなかった。これ以上ない屈辱だっただろう。その悔しさこそが、鈴木の進化を後押ししたのだろう。
あれから2年の時が過ぎた。今季の成績は、129試合に出場して、打率.335、29本塁打、95打点という堂々たるもの。個人タイトルこそ獲得するには至らなかったものの、打率、長打率でリーグ2位に入るなど、あらゆる打撃指標でリーグトップクラスに君臨する打者となった。おそらく今、広島で最も怖い打者といっていい。もはや、2年前の鈴木とは別人である。
あのときの悔しさを胸に、大きく成長した鈴木が雪辱を果たすときがきた。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)