減少する“対世界”の機会
今月10日から4日間、侍ジャパンの強化試合が行われた。
結果は侍ジャパンが3勝1敗と勝ち越したものの、「滑る」と言われているWBC公式球への対応や投手起用法なども含め、改めて課題が浮き彫りになった。
対戦した2カ国がメキシコとオランダということもあり、現役メジャーリーガーはメキシコのエイドリアン・ゴンザレスほか少数。そのゴンザレスもチームに帯同しただけで、プレーする機会はなかった。
消滅した「日米野球」
このように、NPBでプレーする日本人選手が一線級のメジャーリーガーと対戦する機会は確実に減少している。というのも、かつては2年に一度のペースで開催されていた「日米野球」が、2006年を最後にその役割を終えているからだ。
直近では2014年に侍ジャパンの強化試合という名目で一時的に復活したが、定期的な開催は今やもうない。
2006年といえば、第1回目のWBCが開催。それを機に日米野球は消滅している。
WBCは“野球の国際化”という意味で大きな一歩となったが、日本国内でプレーする選手が一流メジャーリーガーと対戦する機会は大きく減ってしまったのだ。
かつてはスターたちが続々来日...
WBCは国の威信をかけた戦いであり、日米野球とは本気度が違う。しかし、日米野球でしか得られなかった事もあるはずだ。振り返ってみると、過去の日米野球には“スゴイ”選手たちが来日している。
1990年以降だけでもランディ・ジョンソンやバリー・ボンズ、ケン・グリフィーJr.にロジャー・クレメンス、オジー・スミス、マイク・ピアザ、ペドロ・マルチネス、アレックス・ロドリゲス、カル・リプケン、サミー・ソーサ、マニー・ラミレス、トレバー・ホフマン、デビッド・オルティス、ミゲル・カブレラなどなど...。
ケガのリスクが高い投手こそ少ないが、打者に関しては驚くような超一流選手の名前が並んでいる。
アメリカにたどり着くのは容易ではない
WBCが始まったことで、本当に「日米野球」の役割は終わってしまったのだろうか...。
日本は来年のWBC・1次ラウンドでキューバ、オーストラリア、中国と同グループ。2次ラウンドに勝ち進むと韓国、台湾、オランダ、イスラエルのうちの2チームと対戦することになる。
地の利を生かして決勝ラウンドに進出する可能性は高いとみられるが、強化試合を見る限り、第2ラウンド突破はそう簡単なものではないだろう。
もし万が一、第2ラウンドまでに敗退するようなことがあれば、アメリカやドミニカ共和国、プエルトリコといった多くのメジャーリーガーを抱えるチームとの対戦はなくなってしまう。
たとえ決勝ラウンドに進出したとしても、一線級のメジャーリーガーとの対戦は1~2試合しかないのだ。
貴重な“世界に触れる”時間を
そしてもっと打撃を受けているのは、日本のファンたちだろう。「日米野球」がなくなったことで、一流メジャーリーガーを見るチャンスは激減している。
WBCも決勝ラウンドはアメリカでの開催となっており、今後もこのルールが続く限り、日本で多くの現役メジャーリーガーを見る機会というのはほぼない。
決してWBCそのものを否定しているわけではなく、野球の国際化にとってのWBCの意義は十分に理解している。しかし、WBCが開催されない年に合わせ、たとえ4年に一度だけでも「日米野球」を行うことはできないものか。
様々な障壁はあれど、日本のプロ野球界にとって大きな意味があるはず。そしてMLB側にとっても、日本国内でのファン層拡大は重要なはずだ。
選手たちにとっても、ファンにとっても貴重な“世界に触れる”時間。その復活を切に願う。
文=八木遊(やぎ・ゆう)