カブス・鈴木誠也(写真=GettyImages)

 18日に開幕する「ドジャース対カブス」2連戦を前に、先週末に行われたのが合計4試合のプレシーズンゲームだ。

 15日の「ドジャース対巨人」では、大谷翔平が第2打席に凱旋アーチを描き、日本のファンを喜ばせた。しかし、4試合を通じて際立ったのは、カブスとドジャースに快勝した阪神の強さだった。

 バリバリのメジャーリーガーが並ぶカブスとドジャースの打線を完璧に封じ込んだ投手陣はもちろん、打線も佐藤輝明が豪快弾を放つなど、パワーのあるところを見せた。

 16日に阪神が昨季のワールドシリーズ覇者を3-0で破ると、SNSでは「阪神世界一」がトレンド入り。虎党にとって大盛り上がりの週末になったことは間違いない。

 そんな週末の4試合で記録されていたのが、全投球と全打球のデータだ。投球の球速や回転数のほか、打者の打球速度や角度、スイングスピードなどが事細かにトラッキングされていた。

 例えば大谷が放った本塁打の距離は391フィート(約119m)、打球角度は32度、打球速度は105マイル(約169キロ)だった。驚かされたのは、やや泳がされたとはいえ、大谷の本塁打の打球速度が4試合を通じて23位だったこと。全体的にメジャーリーガーより巨人と阪神の打者の方が鋭い当たりを放っていた印象が残っているだろう。

 実際に100マイル(約161キロ)以上の打球は合計46本あったが、そのうち半数以上の24本を巨人と阪神の打者が記録していた。

 ただ、これにはカラクリがあったことを熱心なファンならご存じだろう。

 4試合を通じて守備側のチームが自チーム所属のリーグ公式球を使っていたことが分かっている。つまり、巨人と阪神の打者はMLB公式球と、ドジャースとカブスの打者はNPB公式球とそれぞれ対峙していたということだ。

 阪神の打者が痛烈な当たりを放っていた一方で、ドジャースとカブスの打者は、打席直後に首をかしげる場面もあった。一見、バットの芯でとらえた当たりが平凡な外野フライになることも少なくなかった。

 奇しくもプレシーズンの4試合で証明されたのは、NPB公式球は飛ばないという事実だろう。歴史的な「投高打低」のシーズンとなった昨季のNPBで公式球に疑念が生じていた。昨季のオープン戦から、「ボールが飛ばない」という“クレーム”が多くの打者から出ていたのは周知の事実。NPBはボールの仕様変更を否定していたが、図らずもその疑念が再燃する形となった。

 18日から始まる「ドジャース対カブス」の開幕シリーズで使用されるのはもちろんメジャーの公式球。狭い東京ドームで空中戦が繰り広げられるのか。この2連戦はそういう視点からも注目が集まる。

文=八木遊(やぎ・ゆう)

この記事を書いたのは

八木遊

1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。

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