球界きっての“ムードメーカー”として知名度急上昇
北海道日本ハムファイターズの杉谷拳士。2008年のドラフト6位で帝京高からプロの門を叩いた男は、これまで7年のキャリアで通算334試合の出場。打率.229、5本塁打、48打点という成績で、規定打席に到達したことは1度もない。
しかし、その明るいキャラクターと強烈な個性は多くのプロ野球ファンに知れ渡っており、今や一般層にも「杉谷=おもしろい」という認識が広まっている。
大きなキッカケとなったのが、テレビ朝日系列で放送されるお正月の名物番組「とんねるずのスポーツ王は俺だ!」。とんねるずの2人が様々な競技でその道の一流選手たちに真剣勝負を挑み、毎回名勝負を繰り広げることで人気を博しているこの番組。
杉谷は番組の人気企画『リアル野球BAN』にて、帝京高の大先輩でもあるとんねるず・石橋貴明が率いるチーム石橋の一員として参戦。対戦相手の侍ジャパンチームに対し、闘志をむき出しにして全力で挑発していく姿勢で視聴者の心を掴む。
特にすごかったのがチームの先輩である中田翔に対する“おちょくり”で、普段は遠征先で中田の目覚まし係を担当していることなどを暴露しつつ、ここぞとばかりに先輩を攻め立てる姿が笑いを誘った。
ついには「野球がうまい芸人」とまで言われるようになった男だが、本人はもちろんそれで納得しているわけではない。8年目を迎える今シーズンは、レギュラー獲得に燃えている。
今年こそ栗山監督を振り向かせる
チームを率いる栗山英樹監督も、杉谷の才能には期待を寄せている。「この年齢まで自分らしくいられる、なかなかできないこと。ここから先は、結果を出すしかない」。
オフには背番号がひとケタの「2」に変わった。かつてあの小笠原道大が背負ったファイターズファンにとっても特別な番号。球団も杉谷にかける期待が大きい。
昨シーズンはプロ入り後最も多い192打席に立って打率.295をマーク。過去2割台と1割台を行ったり来たりしていた打率を考えると、飛躍的な向上といえる。
特に「左右別の打率」が向上しているのが大きい。スイッチヒッターながら左打席では思うような数字が残せず、上述の『リアル野球BAN』でも、チームを率いる石橋貴明から右で打つことが“厳命”されるなど、度々ネタにされていたほどだった。
ところが、2015年は左打席(対右投手)でも打率.300を記録。プロ入り後はじめて左打席での本塁打も放ってみせている。
元々は打撃にも定評があった男。2010年にはイースタンでリーグ3位の打率.313をマークしており、133安打を放ってリーグの新記録も打ち立てた。
あまり打席に立つ機会がもらえなかったことも相まって長い間“一軍の壁”に苦しんだが、持ち味の俊足とユーティリティーに守れる器用さに加え、一軍でも通用する打力が備わったとすれば、レギュラーへの道はグッと近づいてくる。
昨年は試合前の栗山監督の囲み取材中にしれっと現れ、分かりやすいアピールをしては監督にスルーされるという流れが定番化していた。しかし、今年はそうはいかない。今年こそ栗山監督を振り向かせ、メンバー表に名前を書かせてみせる。
▼ 杉谷拳士
生年月日:1991年2月4日(25歳)
出身:東京
経歴:帝京高
ポジション:内野手
身長/体重:173センチ/77キロ
投打:右投両打
[NPB通算] 334試 率.229 本5 点48 出塁率.290 長打率.306 OPS.596