はやくも始まった“大谷フィーバー”
29年ぶりとなる日本ハムのアメリカキャンプが、日本時間16日に打ち上げを迎えた。
大谷翔平にとっては初めてとなるアメリカでのキャンプ。「日米野球」や「プレミア12」での活躍などもあり、米球界からも高い関心を寄せられる“怪物”の出現に、現地は大いに沸いた。
キャンプ初日、まず大谷を驚かせたのが“専属SP”の存在。現地の警備会社ではたらくジョン・クロフォードさんによる付きっきりの警備を受けることになったのだ。
「自分の仕事をやっているだけ」と淡々としているクロフォードさんだが、大谷本人は「ずっと隣にいるから圧をかけられている気がして嫌です」と苦笑いを浮かべていた。
しかし、それは大袈裟なことではなかった。日本のファンのみならず、アメリカのファンによる出待ちが連日殺到。大谷のサインボールやサイン入りの写真がオークションサイトなどで高値で売られるという“事件”も勃発し、すでにプチフィーバー状態となっていたのだ。
現地のファンに報道陣、さらにはスカウト陣といった多くの人間の視線を一点に集めた大谷だが、本人はいたって冷静。「今すぐ行くわけじゃないので」とどこ吹く風。大物ぶりをいかんなく発揮し、貫禄すら感じさせた。
投げては「シリング」、打っては「マツイ」級!?
今回のキャンプはパドレスが施設を提供する形で実現したもので、パドレスの関係者が度々練習を見学した。
お目当てになるのは、やはり大谷翔平。かつて日本ハムでもプレーしたパドレスのアンディ・グリーン新監督は、「腕の振りがスムーズ。カート・シリングを思い出した」とメジャー通算216勝の大投手を比較対象に挙げて絶賛した。
さらに続けて打撃の方を目の当たりにすると、「信じられないくらい打者としても素晴らしい...」と驚嘆。「投打両方やっている彼みたいな選手は米国で見ても稀少な存在。十分戦力になれると思う」と高く評価し、「もしメジャーに来ることがあれば、自分のチームに来て欲しいよ」と早くもラブコールを送った。
メジャー通算1712安打を誇り、現在はパドレスのベースボールオペレーション特別補佐を努めつマーク・ロレッタ氏は、打者・大谷を特に評価。「これだけ若いのにバットスピードとパワーを兼ね備えている選手はアメリカでも少ない。投手として専念させるのはもったいない」と絶賛する。
「並外れたパワー。打者だけでもトップの有望選手になれる」と語り、「練習でのパワーはマツイ(松井秀喜)と互角と見ている」と評価。「ぜひうちに欲しい。ください」とこちらも早すぎるラブコールを送る。
さらに、現役時代はメジャー屈指のストッパーとして活躍し、通算セーブ数は歴代2位の601セーブを誇るパドレスの球団GM補佐トレバー・ホフマン氏も、日本の若き才能を絶賛する。
かつて野手として入団しながら挫折し、投手に転向して成功を収めた若き日の自身を重ね、「大谷の方がはるかに凄い。大谷くらいの才能があれば投打の両方でやれる」と“二刀流”を推進。
「僕が現役だったら絶対に対戦したくないよ。両方やることは信じられない」と球界の常識を打ち破る挑戦を続ける大谷にエールを送った。
メジャーでの“二刀流”はアリ?ナシ?
パドレス以外にも、多くのメジャー球団関係者が大谷を一目見ようとアリゾナ州ピオリアのグラウンドを訪れたが、百発百中と言っていいほどの確率で絶賛のコメントを残している。
メジャー球団は例年2月の3週目頃からキャンプインとなるが、アリゾナ州にキャンプ施設を持つ多くのチームがアジア担当スタッフを前倒しでアリゾナへと派遣。日本ハムの練習を視察するよう手配を行った。
現地時間2月8日、野手として出場した韓国ロッテとの練習試合には、パドレスをはじめカブスやナショナルズのスカウト陣が20名以上集結。2月10日の実戦初登板にはメジャー全30球団・80名の関係者が詰めかけた。
ヤンキース時代に松井秀喜の獲得に尽力し、現在はジャイアンツで環太平洋地区のスカウトを務めるジョン・コックス氏は、「“ネクスト・ダルビッシュ”だね。性格もアメリカの雰囲気にあっていると思う」と評価。
かつて日本ハムなど日本でもプレーし、現在はカブスで国際スカウトを務めるフェルナンド・セギノール氏も、「ダルビッシュのような雰囲気を感じた」と、ファイターズの背番号11を継承した先輩・ダルビッシュを名前を挙げて大谷を評価する。
また、気になる“二刀流”に関しても、コックス氏は「アメリカでは考えづらいけど、日本でやっているんだから可能性はゼロではない」と述べ、セギノール氏も「今は投打の両方をやればいい」とエールを送る。
さらに日本では広島と楽天で指揮を執った経験を持ち、現在はナショナルズのスカウトとして環太平洋地区を担当するマーティ・ブラウン氏は、「打者としても成長している。メジャーで二刀流は難しいかもしれないが、できるとしたら大谷だろう」と大谷が秘める可能性に期待。
パドレスのアドバイザーに就任した日本人メジャーリーガーのパイオニア・野茂英雄氏も、「今まで誰もやったことのない挑戦をやっている。(メジャーでも)二刀流をやっているところを見てみたいですね」と期待を述べた。
日本と同様、アメリカでもその才能で見るものに夢を見せ、期待を膨らませた大谷。自身初のアメリカキャンプは「100点」とし、沖縄・名護市での2次キャンプへと移る。
ここまで投打ともに順調な4年目、大谷は我々にどんな姿を見せてくれるのか。今からシーズンの開幕がたのしみでならない。
▼ 大谷・アメリカでの実戦記録
【野】2月6日・紅白戦 「1番・指名打者」 2打数無安打
【野】2月8日・練習試合(韓国ロッテ) 「3番・指名打者」 2打数1安打
【投】2月10日・練習試合(韓国ロッテ) 2回1安打4奪三振無失点 ☆最速158キロ
【野】2月13日・練習試合(韓国NC) 「3番・指名打者」 5打数2安打
【野】2月14日・紅白戦 「3番・指名打者」 3打数3安打
▼ 大谷翔平
生年月日:1994年7月5日(21歳)
出身:岩手
経歴:花巻東高
ポジション:投手
身長/体重:193センチ/92キロ
投打:右投左打
[NPB通算] 59試(377回2/3) 29勝9敗 奪三421 防2.72
[NPB通算] 234試 率.245 本18 点68 出塁率.300 長打率.429 OPS.729