「憧れの投手」から一発
16日に西武プリンスドームで行われた西武-ソフトバンクのオープン戦。すべての注目は、“第2の故郷”に帰ってきた背番号「18」に集中していた。
ソフトバンクの先発・松坂大輔。“平成の怪物”は慣れ親しんだマウンドに敵として登り、古巣の前に立ちはだかる。そこで、かつてのヒーローを迎え撃って見せたのが、西武の8年目・坂田遼だった。
2回、先頭で打席に立った坂田は、逆球で内に入った初球の137キロをフルスイング。鋭い打球はライトスタンドに突き刺さった。
「憧れの投手であり、対戦を楽しみにしていました。迷わず思いっきり行こうと打席に入る前から決めていました」と興奮気味に語った29歳。「良い結果が出て良かったです」と喜んだ男は、ここまでオープン戦12試合に出場し、打率は12球団トップの.419、1本塁打で9打点と好調を維持している。
ことごとくケガに苦しんだ7年間
坂田といえば、“左のおかわり君”というニックネームで親しまれる大砲だが、これまでブレイクの兆しを見せながらも、ことごとく大事なところでの故障に泣いてきた。
最もレギュラーに近づいたのは2013年のこと。同年4月下旬に一軍昇格すると、5月2日のソフトバンク戦で満塁弾を放つなど活躍を続けていたが、5月19日の阪神戦で盗塁を試みた際に左肩を脱臼。故障前まで27試合に出場して、打率.386(83打数32安打)、5本塁打、26打点と存在感を示していただけに、悔しい離脱となった。
故障が癒え同年のシーズン終盤に復帰したものの、春先に見せたような打撃は取り戻すことができず。翌年も春先に左肩を脱臼し、4月に手術を受けた影響で、プロ入り後初めての一軍出場なしに終わった。
心機一転、背番号を「31」から「88」に変更した15年は、キャンプから猛アピール。田辺徳雄監督も「怪我がなければレギュラーを張っていた時もある。チャンスだな」と期待し、開幕一軍入りを果たすも、夏を前に二軍降格。わずか15試合の出場にとどまった。
いよいよ後がない今シーズン、期待され続けた男も8年目。今年の10月で30歳を迎える。ここまでオープン戦では強烈な存在感を見せているが、坂田が狙うライト、または指名打者というところは競争が熾烈だ。
最大のライバルとなるのが、同じくライトか指名打者での出場が見込まれる3年目の森友哉。今のところは調子が上がって来ていないものの、昨シーズンは年間を通して中軸に座り、17本の本塁打を記録。坂田の7年間通算を1年で上回っている。
さらにこのオープン戦で、“おかわり2世”こと右の大砲候補・山川穂高も好調ぶりをアピール。山川が目指す一塁か三塁というところにはメヒア、中村剛也という不動の存在があり、その兼ね合いで山川が指名打者に入ることになれば、坂田か森か、どちらかがスタメンから外れることになる。
16日の試合後、指揮官は「彼の場合、怖いのはケガだけ。それがなければ開幕も見えてくる」とコメントしており、現段階ではライトの争いから一歩抜けだしているとの評価を与えている。それだけに、あとはこのままの調子、体調で1週間後を迎えられるかどうか。そこが大きなカギを握る。
8年目にして初めての開幕スタメンは目前。期待され続けた“左のおかわり”は、今年こそレギュラーに定着し、大輪の花を咲かせることができるだろうか。
【西武・坂田遼のOP戦成績】
12試 率.419(31-13) 本1 点9