ニュース 2016.03.27. 11:00

外国人も自腹で育てる カープアカデミー復活の兆し

 今月、広島は、練習生としてキャンプに参加していたカープアカデミー出身のサビエル・バティスタとアレハンドロ・メヒアの2選手と育成選手契約を結んだ。過去にはティモ・ペレスやアルフォンソ・ソリアーノなど広島退団後メジャーでも活躍したような選手を輩出していた同アカデミーだが、最近は決して選手育成に成功しているとは言えない状態だった。2014年から2年間広島に在籍し、サイクル安打を達成するなどの活躍を見せたロサリオ外野手が、野手としては当時9年ぶりの選手契約だったことからもその状況が伺えるだろう。

 広島は1991年、MLBのアカデミー制度を参考にしたカープアカデミーをドミニカ共和国に設立。外国人選手の発掘や育成を目的とし、助っ人を高額年俸で獲得してくるのが主流であった当時のプロ野球界としては画期的な動きだった。カープアカデミーはMLB傘下のドミニカ・サマーリーグに所属し、1993年と94年には連続地区優勝、95年にはプレーオフも制してドミニカNO.1チームに成長した。

 しかし、リーグ参加費の増大のためその年にリーグを撤退。設立当時は3球団しかなかったドミニカ共和国のMLBアカデミーもそのころには増え、予算の面で勝てないカープアカデミーには選手が集まらなくなってきていた。さらに球団の経費削減もあり規模を縮小、05年からは投手育成に専念したこともあり、12年にはアカデミー契約選手が4人にまで減少していた。

 実戦練習もままならない状況まで衰退していたアカデミーだったが、12年に球団の松田オーナーが現地視察したことをきっかけに野手育成再開の方針が決まり、14年には総額1億円以上かけた設備の改修工事も始まった。そんな中活躍を見せたロサリオ選手は、衰退していたカープアカデミーにとっても、現地の無名選手にとっても希望となる存在だった。2015年春には天然芝グラウンド4面、室内練習場、宿舎などを完備した施設の改修工事も完了、契約選手の徐々に増え、活気を取り戻しつつある。

 しかし、予算規模では他のメジャー球団アカデミーにはやはり勝てないため、他のアカデミーを辞めさせられた選手や、メジャー傘下の球団を解雇されたような選手がセカンドチャンスを求めてくるケースも多い。これは選手育成の場として考えると不利な気もするが、本来のドミニカではありえないほど長い練習時間や、メジャー流とも違う厳しい練習内容にも耐えられる精神力を求められるカープアカデミーには決してマイナスではないのかもしれない。

 今回の2選手の契約は、カープアカデミー再建の流れを切らさないという意味でも注目すべき出来事だ。とはいえ、まだ育成選手契約であり、外国人枠という問題もあるため、今後、支配下選手となり一軍で活躍するために乗り越えなければならない壁は高い。25年前には前例のない中でアカデミー設立を決断し、12年にはまわりのアカデミーが投手育成にしぼった活動をする中で野手育成再開を決めた。広島という球団の選手育成に対するぶれない姿勢が結果を出すことで、プロ野球球団のあり方を見つめ直すきっかけとなってほしい。
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