今こそ「野球の底力を」…
15日の楽天戦。決勝の3ランを放ち、お立ち台に立ったソフトバンクの内川聖一は大粒の涙を流した。九州・大分出身の内川にとって、同じ九州で起きた熊本の震災を思うと、涙が止まらなくなった。
「こういうこと(震災)はあってほしくない。僕らは野球選手なんで、野球でしか元気を与えることはできませんが、野球を見ている間だけでも笑顔になっていただけるように、全力でプレーしたいと思う」
思えば2011年の3月11日、東日本大震災が起こった時、地元・仙台の楽天の選手たちの中には、家族と連絡が取れない選手もいたほど、とてもプレーに集中できる状態ではなかった。当時はオープン戦の真っ最中だったが、翌12日からオープン戦は中止となり、選手たちは様々な場所で支援活動を行うなど、少しでも被災者の方のために…という思いでいっぱいだった。
2011年の4月2日、日本野球機構は全国各地で東日本大震災復興支援試合を行った。その試合の前に、楽天の嶋が放った言葉が思い出される。
「見せましょう、野球の底力を」
この時の嶋も、先日の内川も同じ思いだったのだろう。「被災者の方が少しの時間だけでも嫌なことを忘れてくれれば…」「野球を見てもらって、少しでも笑ってくれれば…」野球選手として、野球でしか勇気を与えられないという思いを胸に、選手たちは全力のプレーを見せるしかないのだ。
奇しくも、15日に行われたのは嶋と内川を擁するソフトバンク-楽天戦だった。内川の涙の陰で、きっと嶋も胸がいっぱいだっただろう。
残念ながら、16日に予定されていた公式戦ソフトバンク-楽天は震災の影響で中止となった。また、19日(熊本)と20日(鹿児島)に行われる予定だった巨人-中日の試合も中止が発表された。
中止から一夜明けた17日、この日のソフトバンク-楽天は開催が決定。試合前には、プレー以外の部分でも「何かできることがある」(内川)と、ヤフオクドームの3番ゲート前でソフトバンクと楽天の選手たちが募金の協力を呼びかけた。こういった募金活動は各球場でも行われており、各球団や各チームの選手会から、義援金の寄付も続々と発表されている。
内川をはじめ、九州に本拠地を置くソフトバンクの選手たちは、より熱い気持ちを持って今後も闘っていくだろう。きっと野球の底力を見せてくれるはずだ。