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話題を集める東大の快進撃 勝ち点奪取へのカギを握る“第3の男”

快進撃を見せる東大野球部


 2016年、春の東京六大学リーグが開幕。2週目を終えた現在、話題を集めているのが東京大学だ。

 エース左腕の宮台康平(3年)は、早稲田との開幕戦で、東大記録を塗り替える「13」の三振を奪い、8回までスコアボードに「0」を並べる快投。惜しくも9回に1点を奪われてサヨナラ負けを喫するも、翌週の明治戦でも同じく8回まで無失点の好投を披露する。

 結果的には2週連続で0-1xのサヨナラ負けとなったが、敗戦という結果以上に、昨年春夏を連覇した早稲田や、今秋ドラフトの目玉・柳裕也(4年)を擁する明治を相手に、対等に投げきったことのインパクトの方が圧倒的に大きかった。

 東大が話題をさらったのは、宮台の好投だけではない。1敗で迎えた明治大との第2戦、先発は宮台と同学年で、昨春に94連敗をストップした試合で勝ち投手となっている柴田叡宙(3年)だった。

 成長著しい柴田は6回を被安打6、2失点と試合を作ると、2番手で登場した有坂望(2年)も3回を3安打無失点の好投。打線も、初回に幸先よく敵失と喜入のタイムリーで2点を先制すると、同点で迎えた最終回には山田のサヨナラヒットで対明治戦12年ぶりの勝ち星を挙げた。

 しかし、14年ぶりの勝ち点をかけてエース・宮台が登板した翌日のゲームは、宮台が3回3失点で降板とピリッとせず、前日勝ち投手となった有坂も2回7失点と乱調。終わってみれば3-12の大敗で、14年ぶりの勝ち点は翌週以降にお預けとなった。


東大躍進のカギを握る“東大史上最速投手”


 宮台、柴田に有坂...。来年以降も楽しみな東大の投手陣であるが、勝ち点奪取への課題は明確。それが「3戦目の投手力」だ。そのカギを握る男こそ、山本俊(4年)である。

 山本は、東大史上最速の“148キロ右腕”として知られる今秋のドラフト候補の一人。昨春に連敗を94でストップさせた試合にも先発として登板しており、継投した4人の投手の中で最長の4回を投げ、1失点の好投。勝ち投手にはならなかったが、連敗ストップの立役者になった。左のエースが宮台なら、右のエースは山本なのだ。

 その山本だが、今年の春は昨秋から悩まされる肘の故障の影響もあり、春のオープン戦では結果を残せず。調整が遅れたため、マウンドはおろかベンチ入りもしていない。

 愛知県・西春高校時代から最速141キロのストレートには定評があったが、高校時代の最高戦績は県ベスト32止まり。背番号「1」をつけた最後の夏の大会を終えると、山本は白球をペンに持ち替えた。

 目標は、東大一本…。必至に勉強に打ち込んだ。実は高校時代から肘には不安を抱えており、2年間の浪人期間中も、大学入学後に向けた投球練習は行なうことはできなかった。

 晴れて東大合格を果たした後に気づいたのが、2年間に及ぶ浪人期間のブランクの大きさだ。影響は想像以上に大きく、一年間は身体作りに励み、神宮デビューは2年の春。この時の最速は144キロだった。そこから3年春には東大史上最速となる148キロを記録し、一気に2016年ドラフト候補にまで名乗りを挙げる。


待たれるキーマンの復活


 4月18日、東大が明治から劇的勝利を挙げたあの試合。山本は、後輩達の勇姿をネット裏から観戦していた。

 試合後、「チームの勝利はとても嬉しいです。最上級生と言う立場上、チームの勝利が何よりです。ただ、やはり焦りは感じますし、自分が勝利のマウンドに立ちたいという気持ちもあり、何も出来ない悔しさ、辛さはあります。」と語っている。

 目標とする投手は、楽天の則本昴大。「とにかく結果を出して、プロのスカウトの方に見て頂きたいです。そのためには、今を大切にしなければならないと考えています。プロに行くために必要なこともまた、今を大切にし、後悔なく過ごすことだと思っています」。出遅れたドラフトイヤーだが、腰は低く、志は高い。

 東京大学工学部システム創成学科に在籍するエリートだけに、将来は野球以外にも活躍の道が広がる。しかし、後輩たちがピンチを切り抜けるごとにネット裏で声を張り上げ、手を叩いている山本を見て思う。勝ち点奪取へ、欠けている最後のピースを埋めるのは、この男しかいないだろう。

 再びボールをペンに持ち替えるのには、まだ早い。東大躍進のカギを握る“第3の男”の復活を待ちたい。

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