ニュース 2016.03.31. 18:15

畔上、谷田、藤岡…今年の社会人野球は、悔しさをバネにするルーキーたちが熱い

無断転載禁止
大学時代に大学JAPANに選出された畔上翔

まさかの指名漏れ


 2015年のドラフト会議では、注目選手が次々に指名され、晴れてプロ入りを果たした。茂木栄五郎(楽天)、吉田正尚(オリックス)、高山俊(阪神)など、開幕スタメンを摑み取った選手も多い。躍動する「プロ入り1年生組」を横目に、まさかのドラフト指名漏れを経験し、2年後のドラフトへの雪辱を胸に秘める「社会人野球1年生組」達がいる。

 侍ジャパンへの選出経験も豊富な亜細亜大の藤岡裕大と北村祥治はトヨタ自動車へ、慶応大谷田成吾はJX-ENEOSへ、明治大の菅野剛士は日立製作所へ、それぞれ進んだ。そんな選手たちのなかで、高校野球から大学まで強烈なキャプテンシーと、類い稀な打撃センスで、アマチュア野球界で特別な存在感を放つのが、日大三高で主将として全国制覇、法政大学では100代主将を務め、今年の春にホンダ鈴鹿に進んだ畔上翔だ。

 畔上のドラフト前後の模様は、複数のテレビ局が特集した。その反響は大きく、インターネット上では多くの野球ファンの、畔上の指名漏れを悔やみ、また2年後のドラフトに向けたエールの書き込みが飛び交った。多くのメディアは、畔上のキャプテンシーの強さ、人間性の高さ、野球に取り組む姿勢について称賛した。

 「高校野球の最強のチームは?」そんな話題は、野球ファンの間では、定番である。そして「2011年全国制覇したときの日大三高」という答えも、また定番。まさに衝撃的な強さであった。今年の春にJR東日本に進んだ吉永健太朗(早稲田大)、鈴木貴弘(立教大)のバッテリーに加え、切れ目のない打線の中心には、慶応から日本ハムに入団し開幕一軍を掴んだ4番横尾俊建、明治大学で六大学最多安打記録を打ち立て阪神入りし、開幕スタメンを掴んだ高山。そしてクリーンアップの先頭3番に畔上がどっしりと構えていた。

 この世代の日大三高の目指した野球は、「10-0で勝つ野球」。夏の甲子園決勝は、光星学院に11−0で勝利し、まさに有言実行、有終の美を飾った。そんな最強世代が卒業後に六大学に散らばり、4年間しのぎを削り迎えたドラフト。最多安打記録の高山、4試合連続ホームランを記録した横尾に比べて、畔上は、「キャプテンシー」「人間性の高さ」への評価が目立った。畔上は伸び悩んだという見方も強かった。

 しかし、振り返ると、畔上は、大学時代決して伸び悩んだというような成績ではない。1年春からリーグ戦に出場すると、3年時には春、秋リーグとも3割を越える打率を残し、その年のハーレムベースボールウィークで大学日本代表入りすると、同年秋にはU21侍ジャパンにも選出しされ活躍した。

 4年春こそ打率1割台と低迷したが、続く秋には、.404でリーグ2位、ベストナインにも選ばれた。在学中には日大三高の先輩で今年ロッテ入りした関谷亮太(明治大)からバックスクリーン横にホームランを放ち、同じく先輩山崎福也(オリックス)からサヨナラヒットを打つなど、勝負強さが光った。


社会人で汗を流す


 畔上は口ぐせのようにいつも言っていた。

「自分は、センスが全くないので、練習するしかないんです。」

 畔上とトレーニングを共にすると、それが単なる謙遜ではないことを痛感させられる。彼のその追求心と共に、決して大柄ではない身体に秘めたパワーに驚かされる。常にプロ野球やメジャーリーグの動画などを見て研究し、取り入れるべきものを探り、「このメニューを何セット」と決めたら、なんとしてもやり抜く。

 身体の強さは、キャプテンシーの強さに負けず劣らず際立つものがある。社会人野球で、技術にさらなる磨きをかけ、2年後、文句無しのドラフト上位指名は、多くの野球ファンの願いだ。

 プロ野球12球団のキャンプがスタートした2月。畔上は、三重のホンダ鈴鹿のグランドで汗を流していた。ドラフト指名漏れした直後には、悔しさを噛み殺し、日課の素振りを始めた。

 新天地のホンダ鈴鹿での3月のオープン戦では、2試合連続サヨナラヒットや、一試合4打点を記録。4番にも座るなど、既に結果を残し、順調なスタートを切っている。JX-ENEOSの谷田も、4番に座るなど、確実に彼らの「あの日」は、バネになっている。

 社会人野球は、プロ野球、大学野球、高校野球に比べてメディア露出が少ない。今年は畔上を始め、多くの社会人1年目の選手など、見所が多い。16年、7月12日の聖地東京ドームを掛けた予選は、地域ごとに4月から6月にかけて幕を開ける。
ポスト シェア 送る
  • ALL
  • De
  • 西