日本ハムの救世主候補
首位・ソフトバンクの背中がなかなか見えてこない昨年の2位チーム・日本ハム。ここまで順位こそ3位につけているものの、32試合で14勝17敗1分の借金生活となっている。
エース・大谷翔平が5月1日にようやく今季初勝利を挙げたものの、投手事情は前・後ともに苦しいまま。大谷の誤算はもちろん大きな打撃だったが、他の先発ローテ組もいまひとつ波に乗れていないのが現状だ。
昨年の新人王・有原航平がここまで4戦3勝、防御率はチームトップの1.44でひとり気を吐いているが、同じく3勝を挙げる左腕・吉川光夫はここ2戦苦しい投球を続けており、防御率は5.52。さらに助っ人コンビのメンドーサとバースも共に1勝ずつで負け越し中とサッパリなのだ。
交流戦前に少しでも上位との差を詰めておきたいというのはどの球団も共通した狙い。いわば5月は前半戦における“勝負の月”と言える。
そんな中で救世主的な役割に期待がかかる男がいる。プロ3年目の高梨裕稔だ。
リリーフで欠かせない存在感も...
千葉県の土気高から山梨学院大を経て、2013年のドラフト4位で日本ハムに入団した高梨。一軍デビューは昨年で、2試合に投げて0勝1敗。それでもファームでは11勝(6敗)をマークし、リーグトップの122奪三振を記録するなど実力をつけ、今年は新人王候補に挙げられるほどに飛躍を期待された投手である。
迎えた春のキャンプで猛アピールを見せるも、オープン戦では4試合で1勝1敗、防御率5.79と最後のひと押しに欠け、開幕ローテーション入りはならず。
それでも中継ぎとしてその役割を全う。4月1日のソフトバンク戦では、同点の9回から登板。強力打線の中軸である内川、カニザレス、松田を見事に三者凡退で斬って取り、チームはその裏に陽岱鋼のサヨナラ打で勝利。高梨に嬉しいプロ初勝利が舞い込んだ。
ここまでリリーフとして11試合に登板し、1勝1敗で防御率は1.54。開幕から苦戦が続いたリリーフ陣の中で抜群の存在感を発揮している。
守護神・増井浩俊が不調で戦列を離れている今、高梨は日本ハムのブルペンを支える貴重な存在となっているが、ここに来て“先発待望論”が噴出しているのも事実である。
反撃の切り札となるか!?
高梨とのローテーション争いを制した新助っ人のバースが5試合で1勝4敗、防御率5.68という内容。中村勝やルーキーの加藤貴之が谷間の先発を埋める中、「高梨に先発を...」というファンの声は大きくなってきている。
大学時代には関甲信リーグで2度の最多勝を獲得するなど、通算で26勝を挙げた本格派。昨年はファームでチームトップの114回2/3を投げるなど、元は先発を本職としていた投手だったのだ。
そのボールが一軍でも通用することはすでに証明済み。ここに来て白村明弘や斎藤佑樹らが中継ぎで一軍初登板を果たしており、先発に回るチャンスも出来つつある。舞台は整った。
5月攻勢の切り札となるか…。栗山英樹監督が「高梨」というカードをどのように切ってくるか、次の一手に注目だ。