好スタートを切ったスラッガーたち
4月後半から西武・メヒアの勢いが止まらない。
4月24日の楽天戦では3打席連続本塁打を記録。5月4日のオリックス戦での2打席連続弾も含め、ホームランダービーを独走。量産体制に入ってから、その勢いは留まるところを知らない。
加えて昨年までと違うのが、「打率が伴っている」というところだろう。ここまでは打率も3割以上をマークし、打撃成績の上位に名を連ねている。
一方でセ・リーグを見ると、リーディングヒッターを争う広島のエルドレッドとヤクルト・山田哲人が本塁打数でも10本を越え。こちらも長打率は7割前後を保つなど、好スタートを切った。
山田に至っては盗塁のペースも順調で、まだまだ時期尚早ではあるが、2年連続のトリプルスリーも十分期待できる。
“トリプルスリー”の難しさ...
山田哲人とソフトバンクの柳田悠岐が昨シーズン同時に達成したことで一躍話題になった“トリプルスリー”。打率3割・本塁打30本・盗塁30を同一シーズンで達成するというものであるが、80年の歴史を誇るプロ野球界でもわずか10人しかいないという大記録だ。
色々な考え方はあるだろうが、“トリプルスリー”が難しいとされる一番の要因は、「長打力」と「走力」の両立だろう。
シーズン30発を打てるようなパワーを持った選手というと、やはり体も大きいパワー型の選手が多くなり、走るという能力に関しては期待できない場合が多い。
逆もまた然りで、シーズン30個の盗塁を決めることができる選手といえば、邪魔な筋肉を削ぎ落としたスリムなイメージ。また、盗塁をする機会を増やすには長打よりも単打のほうが都合がいいため、端から長打を捨てた打撃スタイルになりがち、ということもある。
打撃に特化した“ダブルスリー”なら...?
では、打撃力だけをピックアップした「3割・30本」だとどうなるのだろうか。30盗塁は期待できないメヒアも、エルドレッドも、このままいけば達成できそうな数字である。
過去5年間の打撃成績から「3割・30本」の達成者を見ていこう。まず2011年は、いわゆる“違反球”の影響がモロにでたシーズン。セ・パともに30本以上打った選手は、本塁打王に輝いた中村剛也(西武/48本)とバレンティン(ヤクルト/31本)の2人だけ。ともに打率は3割を下回り、「3割・30本」には届かなかった。
2012年も、パ・リーグでは30本塁打以上が1人も出なかったというシーズン。2年連続で本塁打王を獲得した西武・中村でも27本止まりだった。ちなみに打率は.231である。一方のセ・リーグも、バレンティンが31本塁打を放ったが、規定打席に到達しなかった。
“ダブルスリー”も一筋縄ではいかない...
達成者が出ないまま迎えた2013年。この年も、パ・リーグは本塁打王のアブレイユ(日本ハム/31本)だけが30発以上を記録し、打率は.284で届かず。
そんな中、セ・リーグでは、シーズン本塁打の日本記録を塗り替える60本塁打を放ったバレンティンが、打率でもリーグ2位の.330を記録。文句なしでクリアした。
さらに、この年の首位打者に輝いたDeNAのブランコも、打率.333で41本の記録。バレンティンの陰に隠れたが、こちらも素晴らしい成績で「3割・30本」を成し遂げた。
続いて2014年。パ・リーグではこの年加入のメヒアが最も惜しいところまでいったが、最終的に34本塁打を放つも打率は.290に終わった。ほかに30本以上を記録した中村やペーニャ(オリックス)も、打率は2割台半ばに終わっている。
そんな中でセ・リーグでは、ヤクルトのバレンティンが打率.301と31本塁打を記録し、見事に2年連続で「3割・30本」を達成。安定した打撃を披露した。
そして2015年、“トリプルスリー”を達成した2名は文句なしとして、他の選手はどうだったか。
見ていくと、セ・リーグではそもそも30本以上の本塁打を記録した選手がいなかった。パ・リーグには柳田の他に30本塁打以上の選手が6名いたものの、その中で最も打率の高かった松田宣浩(ソフトバンク)でも、肝心の打率は.287だった。
ということで、「30盗塁」と言う難しい条件を外しても、達成は山田と柳田の2名のみという結果だった。
こうして見てみると、ここ5年間での「3割・30本」達成者は、2013年のブランコと、2013年から2014年にかけて2年連続で達成したバレンティン、そして昨年の“トリプルスリー”達成者である山田、柳田の4名だけ。やはりそう簡単に成し遂げられるものでないことがわかる。
“盗塁”を抜いたからといって、そうかんたんには行かない。好スタートを切ったスラッガーたちは「3割・30本」の壁をクリアできるか。山田と柳田の2年連続“トリプルスリー”への挑戦も含め、今年も「3」という数字から目が離せない。