2013年に首位打者
5月に入り、ソフトバンク長谷川勇也の打率が上がってきた。開幕からしばらくは出場の半分ほどが代打での出場だったが、DHスタメンでの出場が増えてきた4月後半から調子を上げ、まだ試合数は少ないが、5月に入ってからは3割を超える打率を残している。
長谷川と言えば、2013年にフルイニング出場での首位打者という偉業を成し遂げた選手だ。2006年大学生・社会人ドラフト5位でソフトバンク入団、3年目の2009年は143試合に出場しプロ初の規定打席到達を果たし、打率.312、安打数はチームでトップの158安打を記録するなどブレークの年となった。
しかし、そこから3年間、ソフトバンクの外野手層の厚さや福田秀平の成長もあり、120試合以上の出場を果たしながらも、2009年の成績を上回ることのないまま終わった。
そんな長谷川が再びその存在をアピールしたのが2013年だった。フルイニング出場を果たし、シーズン途中からクリーンアップの一角を任される形で、最多安打、首位打者のタイトルを獲得。当然のようにベストナインに選ばれた。翌2014年も、途中にケガはあったものの、2年連続で打率3割以上をマークし、チームの日本一に貢献する。
近年は故障で苦しむ
ところが、年齢的にも野球選手として脂の乗り切った時期であり、ソフトバンクの中心選手としての活躍が期待されて迎えた昨シーズンだったが、一軍での出場は30試合にとどまった。
開幕はスタメンで迎えたものの、その後調子があがらないまま4月16日に登録抹消、9月15日に昇格するまでのおよそ5か月間を二軍で過ごし、結果的にチームのウエスタン・リーグ4連覇に非常な貢献を果たすことになった。2014年オフに行った右足首の手術の影響も大きく、CSや日本シリーズに間に合ったとはいえ、ほぼ代打での出場となり、チームの日本一の陰で本人にとっては不本意なシーズンだったはずだ。
そんな状況での昨シーズンオフの契約更改においてソフトバンクは周囲の驚く条件を長谷川に提示した。年俸現状維持2億円の3年間複数年プラス出来高払い。成績から見て大幅ダウンもあると覚悟していた長谷川本人も驚く高評価だった。
順調にいくと今シーズン中にFA権を獲得する長谷川の残留に、チームが先手を打ったという事情はあるものの、前年の成績だけ見れば異例の条件と言えるだろう。さらに長谷川は今年からチームの選手会長を任されており、チームとの深い信頼関係が伝わってくる。
酒田南高校時代は、甲子園に3回出場しているとはいえ全て初戦敗退。専修大では1年春からレギュラー定着し、4年時にはリーグMVPを獲得したとはいえ、結局4年間ずっと東都大学2部リーグ所属だったことからもわかるように、決して派手なタイプの選手ではない。
そんな長谷川の実力を見抜き、リーグを代表する打者へ育てたチームと、試合で活躍した後でさえ試合後の反省と調整を怠らずに努力を続けた長谷川との絆は打率や安打数などの数字だけでは測れないものなのだろう。
本来なら機動力も期待できる選手であり、まだまだ完全とは言えない状態だが、打撃に集中できるDHでの出場を続けることで順調に復活への道を進んでいるようだ。これから交流戦が始まることを考えても、長谷川勇也完全復活が、さらにチームの勢いを加速させるためにも重要になっていきそうだ。