プロ野球を経験せずメジャー挑戦
ア・リーグ東地区2位に位置するレッドソックス・田沢純一が好調だ。今季も貴重な中継ぎとして19試合に登板、17回1/3を投げ、0勝1敗、防御率1.53と、その役割を果たしている。
プロ8年目。愛称は「タズ」。2009年にメジャーデビューを果たし、12年からは中継ぎとして安定した投球を見せている。13、14年は71試合登板、昨季も61試合に登板。13年には、同僚の先輩・上原浩治とともに、チームのワールドシリーズ制覇に貢献した。
田沢の経歴を振り返ると、プロ野球を経験せずにメジャー挑戦したのだ。いわゆる「田沢問題」。どんなものだったか、今一度考えてみる。
田沢は、横浜商大高校から新日本石油へ就職。社会人野球で大会MVPにあたる橋戸賞を受賞するなど活躍した。ドラフト1位候補として脚光を浴びたが、ドラフト直前の08年9月11日に記者会見を開き、メジャー挑戦を表明。
12球団にドラフト指名を見送るように文書を送付した。アマチュア選手の希望を無視することは、職業選択の自由を阻害することになり、各球団は田沢の希望を受け入れた。
一方で、今後も、田沢のような選手が続出すると、ドラフト制度そのものが崩壊してしまう恐れがあるとして、ドラフト指名を拒否して海外のプロ球団と契約した選手は、その球団を退団しても、一定期間(大卒、社会人は2年間、高校生は3年間)は日本のプロ野球球団と契約できないとするルールを設けた。これが「田沢ルール」だ。
日本のドラフト制度に一石を投じる形でメジャー挑戦を果たした田沢だが、レッドソックスでは、上記のとおりの大活躍。ただ、日本でプレーしていたら、どれだけやれていたのかという興味もある。
来年のWBC出場も期待
今季も、7回や8回にピンチで登板するケースが多いが、後続を抑えている。心臓に毛が生えているのではないか、というぐらいに落ち着いた投球を見せている。
さらに来年3月に行われるWBCで、日本代表選手への期待も高まる。ある野球評論家は『「田沢ルール」が壁になって、招集できないのではないか』と話したことがあった。だが、このルールは日本の球団と契約できないと規定しているだけで、代表招集ができないとは、どこにも書かれていない。田沢ルールがあっても、田沢が日本代表入りしても問題はないはずだ。
メジャーの先駆者といわれた、あの野茂英雄。近鉄を退団してメジャー挑戦を果たした。その後の野茂の活躍は説明する必要はないだろう。野茂と田沢。メジャー挑戦の方法も違うし、先発と中継ぎと役割も違う。ただ、2人の共通点をあげるとすれば、それは覚悟を持ったこと。田沢には、今後もメジャーで活躍の期待がかかる。