「夢の4割打者」誕生!?
アメリカ・メジャーリーグで“夢の記録”への期待が高まっている。
期待の視線を集めているのがナショナルズのダニエル・マーフィー。今年でメジャー8年目の31歳。昨年まではメッツに在籍し、今シーズンからナショナルズに加入した二塁手である。
新天地で「4番・二塁」の位置に入ると、ここまで42試合の出場で打率.390をマーク。メジャー全体でも断トツというハイアベレージを残している。
マーフィーが一躍話題になったのが、昨年のポストシーズンのこと。9年ぶりに地区優勝を果たしたメッツを牽引し、地区シリーズからリーグ優勝決定戦まで6試合連続で本塁打を記録したのだ。
ワールドシリーズではその打撃は影を潜めたが、結局ポストシーズンだけで計7本塁打を記録する大爆発。メッツファンを熱狂させた。
もともと打撃には定評のあったマーフィーだが、とにかくケガが多かった。十字靭帯断裂などの大ケガにも泣かされ、なかなか満足なシーズンを送ることができず。2015年のシーズン14本塁打というのがキャリア最多で、規定到達での最高打率も2014年の.289。そんな男がポストシーズンで大爆発を見せ、今シーズンもその勢いは止まらない。
ついには「夢の4割打者」へ――。ファンからの期待も日々高まっている。
日本では達成者が出ていない大記録
いやいや、まだ5月。気が早いことはファンも十分に承知している。しかし、ここまで高打率をキープしているのを見ていると、期待してしまうファンの気持もよく分かる。
メジャー最後の4割打者……。それは1941年、いまから75年も前のこと。ボストン・レッドソックスで活躍したテッド・ウィリアムスが、打率.406を記録している。日本では川上哲治が「打撃の神様」と呼ばれていたが、メジャーで「打撃の神様」といえば彼のことを指す。
一方、80年を超える歴史を持つ日本球界の中で、打率4割を達成した打者というのはいない。
惜しいところまでいったのが1989年の巨人・クロマティ。開幕から快音止まらず、97試合目で打率.401に到達。しかもシーズンの規定打席に達していたため、それ以降は出場しなければ、日本球界初の4割打者が誕生していたことになる。
ただし、そんなことをしてまで夢の記録を達成しても、誰も祝福する気にはなれないだろう。もっとも、巨人は優勝争いをしていたため、クロマティは出場を続けた。最終的な打率は.378。この年の首位打者を獲得し、チームも優勝・日本一に輝いている。
日本球界のシーズン最高打率といえば、1986年の阪神・バース。三冠王を獲得したこの年のバースは、6月に4割の大台にも到達したが、最終的な打率は.389だった。
また、1994年に当時日本記録となる210安打を記録したイチロー(当時オリックス)も、115試合目の時点で打率.395を誇り、4割到達の機運が高まったが、最終的には.385でストップ。メジャー移籍前年の2000年にも、97試合目で打率.398まで迫ったが、最後は.387。キャリア最高の打率を残したものの、やはり「夢の4割」には届かずに終わっている。
マーフィーは夢の数字にどこまで近づくことができるのか。今年のメジャーリーグを見ていくうえで、ひとつのたのしみとなりそうだ。