日米通じて初めて経験した「代打の代打」
開幕から1カ月以上が過ぎたメジャーリーグ。今季もイチロー(マーリンズ)はさまざまな記録を打ち立てている。
4月29日のブリュワーズ戦、慣れ親しんだ「1番・右翼」としてスタメン出場したイチローは、初回にライト前ヒットで出塁。すかさず二盗を決め、メジャー通算500盗塁を達成した。500盗塁と2900安打を両方マークしたのは、史上8人目という快挙である。
イチローはこれまでのメジャーのキャリアで盗塁を614回試み、500回に成功。その成功率は.814と非常に高い。
メジャーで盗塁死を公式記録としてつけるようになったのは1912年からだが、メジャーの通算盗塁数歴代トップ10のなかで、成功率が判明している選手でイチローより成功率が高い選手といえばティム・レインズ(.847)ただ一人しかいない。
通算盗塁数を450盗塁以上に下げても、イチローの成功率は歴代4位の数字。歴代1位の通算1406盗塁を記録したリッキー・ヘンダーソンの.808よりも、高い成功率をイチローは残していることが判明している。
また、これは記録ではないが、4月17日のアトランタ・ブレーブス戦では衝撃的な出来事があった。
6回一死一、二塁で代打としてコールされたイチロー。しかし、ブレーブスの投手が左腕に交代したため、マーリンズのドン・マティングリー監督はクリス・ジョンソンを代打の代打としてコールしたのだ。
イチローの代打出場はオリックス時代に通算27度、メジャー移籍後はこの日で94度目だったが、「代打の代打」を出されたのは初めてのことだった。
イチローの左右投手別成績は、通算で対右が.308なのに対し、対左が.328(5月14日現在)と、どちらかといえば対左投手のほうが高打率を残している。にも関わらず、あのイチローが「代打の代打」を送られた姿には、一種の寂しさも感じた。
ちなみに、その他の日本人メジャーリーガーで「代打の代打」を送られたケースというと、過去に3度ある。松井秀喜はエンゼルス時代の2010年、9月8日のインディアンス戦で。田口壮はフィリーズ時代の2008年、福留孝介はカブス時代の2010年にそれぞれ経験している。
「3000安打」達成の可能性は?
さて、イチローの記録に関して最も注目されているのは、「今季中のメジャー通算3000安打達成なるか」だが、現状では厳しいと言わざるを得ない。
残り65安打で今季を迎えたイチロー。ここまでチーム37試合中27試合に出場し、44打数13安打。打率は.295となっており、偉業達成まであと52安打となる。
37試合で44打数ということは、このペースでいけばシーズン通算で193打数となる。193打数で65安打を記録するには打率.337を残す必要がある。
アメリカの成績予測サイトによれば、今季のイチローは183打数49安打で打率.268という数字の予測に。それよりもはるかに高い打率を残さなければ、今季中の3000安打は達成できない。
ただし、これまでリードオフマンとして起用されてきたディー・ゴードンが禁止薬物の使用で出場停止となったため、守備位置こそ違うものの、イチローが1番打者として起用される試合が増える可能性もある。
それこそ、レギュラーシーズン最後の試合で3000安打達成というドラマチックな展開もあるかもしれない。イチローならば、そんな劇的な展開を見せてくれそうな気がしてならない。
文=京都純典(みやこ・すみのり)