好調打線を支える切り札
リーグトップのチーム打率と得点を叩き出す広島強力打線の中で、100打席にも満たない出番ながらも大事な場面で結果を残し続ける男がいる。
松山竜平。9年目を迎える30歳の大砲が、好調広島打線を縁の下で支えている。
開幕当初は代打での起用がメインも、エルドレッドや新井貴浩といった中軸に疲れが見えたところではスタメンで出場。5月以降はスタメンでの出番を大幅に増やした。
交流戦に入ると、パ・リーグ球団の主催試合では指名打者制度が採用されるため、松山のチャンスはもっと増えてくる。ただでさえ強力だった打線から投手が外れ、そこに松山が入ると考えるたら...。広島以外のセ5球団ファンはその恐ろしさがよく分かるだろう。
ケガとの戦い、「37」の剥奪…
九州国際大時代に、九州六大学リーグ新記録となる通算122安打をマークした松山。その活躍が認められ、2007年の大学生・社会人ドラフト4位で広島に入団した。
1年目から一軍昇格を果たしたものの、そこからの3年間はほとんどを二軍で過ごし、一軍出場は2試合に留まる。
その後も規定打席に到達したシーズンというのは一度もないが、2013年には1年を通して一軍に定着し、打率.282、10本塁打、52打点と自己最高の成績をマーク。ブレイクの気配を漂わせた。
ところが2014年のオフ、そんな男に悔しい出来事が起こる。入団から6年間つけていた背番号「37」を、その年のドラフト1位・野間峻祥に奪われたのだ。
広島の「37」といえば、現在チームを率いている緒方孝市監督が入団時に付けていた番号であり、監督として初のドラフト1位指名選手である野間に譲るかたちとなったわけだが、6年前の入団時に「37」を永久欠番にしたいと語っていた松山にとっては大変悔しい決定だっただろう。
その年はケガの影響などもあって出場は前年を下回る80試合だったが、キャリアではじめて3割を越える打率を残すなど、手ごたえを掴んだシーズンだっただけに悔しさも倍増だったのではないか。
プロ野球人生で最大のチャンス!?
ところが、緒方監督の大きな期待と「37」番を背負った野間は、開幕から一軍で出場を続けたものの、打撃ではプロの壁にぶつかる。次第に代走や守備での出場が主となり、最終的には1年目から127試合に出場を果たしたが、打席は188にとどまった。そして今年も開幕一軍入りこそ果たすも、打撃で壁を超えられず。4月3日には登録抹消となり、現在に至る。
一方で、新たな背番号「44」を背負った松山は外野だけでなく一塁や指名打者など、ポジションを固定されることなく起用され、後半戦には代打の切り札的な位置づけまで登りつめた。しかし、“代打の切り札”と呼ばれることに満足する歳ではない。狙うはもちろん、レギュラーのポジションだ。
ふだんのリーグ戦では新井やエルドレッドといった打線に欠かせない主軸がいるだけにチャンスは少なくなるものの、出番が増える交流戦こそ松山の真価が問われる期間。交流戦でアピールできるか否かが、リーグ戦再開後の自身の位置づけを決めると言っても過言ではない。
“切り札”や“秘密兵器”などという称号はもういらない。レギュラー奪取を目指す松山の戦いはもう始まっている。