東北福祉大が初戦を突破
6日に開幕した全日本大学野球選手権大会。仙台六大学代表の東北福祉大は、7日に東京ドームで行われた東農大北海道オホーツク戦に5-0で快勝。1回戦を突破した。
投げてはエース・城間が6回を1安打に抑える好投を見せると、後を継いだ投手陣も含めて95球、9奪三振という安定した投球内容で、相手打線をシャットアウト。
打っても4番・井沢を中心としたクリーンアップがその力をいかんなく発揮し、3番・楠本、4番・井沢、5番・浅沼の3人あわせて5安打・4打点という大暴れ。危なげなく勝利を掴んだ。
チームを率いるのは元プロ野球選手
小柄ながらストレートのMAXが147キロを誇る城間をはじめ、7回に本塁打を打った長坂らドラフト候補に名前が挙がる選手も多く所属している東北福祉大。しかし、この学校に注目が集まった一番のキッカケといえば、元プロ野球選手・大塚光二氏の監督就任だろう。
2001年の現役引退まで、12年間ずっと西武一筋でプロ生活を全うした大塚監督。森、東尾両監督の下、西武の黄金期支えた選手だった。特に大舞台で強さを発揮し、日本シリーズでは6打数連続安打のシリーズ記録(※当時)を樹立。通算打率は.397と優秀な成績を残している。
引退後は解説者として活躍する傍ら、アマチュアクラブチームの指導も続け、2012年のオフには日本ハムのコーチに就任。一軍、二軍の両方で守備走塁コーチを務めた。
今なお残るプロとアマの壁
母校である東北福祉大野球部の監督に就任したのは、昨年7月のこと。その年の1月に、日本学生野球連盟から得た学生野球資格回復の認定を受けての就任だった。
それまでは50年あまりに渡って断絶していたプロとアマの人的交流だが、2013年に行われた学生野球憲章の改定によって大きく可能性が広がった。この改定により、教職免許を持たない者でもプロ・アマそれぞれが主催する一定の研修を受ければ、学生野球資格の回復が認められることになったのだ。
プロとアマの垣根を越えた日本野球のレベル向上、さらにはプロ野球選手のセカンドキャリアの観点からも大きな前進となる出来事だが、問題点もある。
ひとつは、研修を修了したからと言って仕事が補償されるわけではないということ。これまでに多くのプロ野球選手が資格回復認定を受けているが、高校や大学の指導者として現役で活動できるのは、まだまだその中の一握りというのが現状だ。
教育者としての資質も求められ、学校やOB、保護者との信頼関係も必要となってくる学生野球の現場。これはプロ野球とは全く違う世界と言っていいだろう。野球界のプロアマ交流にとって、学生憲章改定は最初の一歩に過ぎず、これからも乗り越えなければいけない壁は高い。
波乱の大会を勝ち上がれるか...
大塚監督の就任直後、昨年の秋季リーグで2季ぶりの優勝を果たした東北福祉大。それでも、乗り込んでいった全国の舞台・明治神宮大会では、1回戦で立命館大学に完敗を喫した。
その点、今回の一勝は、昨年乗り越えられなかった全国の壁をひとつ越え、着実に実力と実績を積み重ねているように見える。
野球だけではない人間的な部分も求められる学生野球界において、プロ野球の経験者にまず求められるのは、プロでの経験をいかした高いレベルの野球指導力だ。大会での結果も、当然評価の対象として重要な位置を占める。
東京六大学を制した明治大が8強入りを逃すなど、波乱を呼んでいる今回の大会。大塚監督率いる東北福祉大はどこまで勝ち上がることができるか…。次戦は9日、第4試合で上武大と対戦する。