明徳義塾~早稲田大の野球エリート
埼玉西武ライオンズ・松下建太――。西武ファンならば、この名前を聞いてピンとくることだろう。
2009年、早稲田大からドラフト5位で西武に入団した投手だ。残念ながら昨年オフに戦力外通告を受け、現役引退を決意。現在は西武の二軍用具担当して、第2の人生を送っている。
広島出身の松下は、小学校時代「鯉城シニア」に所属。今や日本の主砲となった日本ハム・中田翔とはバッテリーを組んだ間柄であり、2歳年下の中田は今でも松下のことをリスペクトしているという。
明徳義塾高から早稲田大と進み、即戦力候補として西武に入団。いわゆる“エリートコース”を突き進み、野球人生は順風満帆だったようにも見えたが、プロ入り1年目に右肩痛を発症。2年目に手術を受けるなど、同期入団の選手たちには大きく水を開けられてしまった。
必死にリハビリを続け、夢の舞台を目指して二軍でもがき苦しんだ4年間。決して諦めずにやってきた松下は、ようやく夢の舞台に立つ。
プロ入りから4年が経った2013年の七夕の日。ロッテ戦の9回に登板すると、1回を完ぺきな内容で抑えた。2013年は9試合に登板し、1敗1セーブ。翌年以降も活躍が期待されたが、松下の“晴れ舞台”はこのわずか9試合で終わることになる。
チームを支えることを選択
一昨年、昨年と再び二軍生活を強いられると、シーズン終了後に球団から戦力外を通達された。
他球団へ……という思いもあったというが、松下の人間性を高く評価した球団がフロント入りを打診。人への配慮や、野球人としての立ち振る舞い。そして必死に努力する姿を見続けた渡辺久信シニアディレクターの強い要望もあったという。
打診を受けた松下は、これを受諾。今年から二軍の用具担当として、選手を裏で支える立場となった。用具担当ではあるが、後輩はもちろん誰からも慕われる松下は、ファームの“教育係兼兄貴分”のような存在になっている。
西武のファームから漂う良い雰囲気。そのの要因のひとつには、きっと松下という存在があるに違いない。
西武の二軍には、用具担当という仕事にひたむきに取り組み、汗水流しながら必死にこなす松下の姿がある。これを見た若手選手はもちろん、ベテランも、そして指導者も“良い方向”へと向かっていくことだろう。
今年は西武のファームから目が離せない。