コラム 2016.06.06. 20:00

【白球つれづれ】タニマチと取り巻きと理解者と友人

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清原和博

「白球つれづれ」~第11回・清原和博に求められること~


 「あの人は今」じゃないが、清原和博「元選手」の消息が途絶えてから1週間ほどが経つ。先月31日に行われた覚醒剤使用等の公判では懲役2年6カ月、執行猶予4年の判決が下された。当日の夜には関西地方へ移動したとの情報がある。いずれにせよ、薬物からの脱却という長く苦しい生活が始まったわけだ。

 「必ず更生して人の役に立つ人間に生まれ変わります」と裁判の席で誓った清原だが、そのプロセスで大きな影響を与えるのは人間関係である。

 野球界のスター選手ともなると、通常の人とのつながり以外にも交際は多岐にわたる。大別すれば「タニマチ」「取りまき」と「友人」と「理解者」だ。

 「タニマチ」とはスポンサーや支援者。スポーツ・芸能などの世界ではお気に入りを贔屓にして金品を惜しげもなく与え、酒席を共にする機会が多い。

 「取り巻き」はその選手が連れ歩く際の子分格や夜の世界などで知り合った知人、関係者らを指す。

新たなスタートに向けて


 清原の今後を考えたとき、まずこのタニマチと取りまきを徹底排除することが絶対的な必要条件となる。事件発覚後、彼らは水が引くように清原の周囲から姿を消した。現役時代には常に行動を共にしていた元野球人なども「私は(疑わしい行動には)一切関知していません」と親密関係を否定している。利害関係の害が多くなれば去っていくのは世の常。だが今後の更生の途中過程でもし彼らと遭遇すれば再びかつての居心地の良い、誘惑の多い世界に逆戻りすることだって考えられる。どっぷりとつかり耳障りのいい人間だけを周りに置いたのがこれまでの清原その人だったのだ。

 次なる問題は自立だろう。法廷で情状証人に立った「友人」の佐々木主浩は「時間がかかっても野球界に戻ってきて欲しい」と語った。しかし、現実は厳しい。ある関係者は裁判の際の保釈金すら用立てることが出来ず弁護士事務所が立て替えたと懐具合の窮状を口にする。現役時代に40億から50億円は稼いだとされるのに車や夜の世界の豪遊、挙句の果ては離婚の巨額な慰謝料や養育費などですべてを失った。さらに社会人として立ち直るために入れ墨の除去を指摘する人は多い。こちらも完全除去には2~3年の歳月と数百万円の出費が必要となる。

 文字通り、断崖絶壁の淵に立たされる元スーパースターの商品価値を狙っている業界もある。独占告白本を画策する出版界だ。確かに当座の生活資金を捻出するには現時点で残される数少ない選択肢かも知れない。その上ですべての誘惑を絶ち、地道な努力を続けていくには真の友人と理解者のバックアップが欠かせない。

 裁判の頃から、清原の更生に力を貸すという学園理事長や高名な僧侶らが名乗りをあげている。プロ野球の名球会のメンバーも見捨てることはないと長い目で支援を続ける姿勢を見せている。だが、真の友人といえば前述の佐々木しかもういないのも事実だ。

 40代の再犯率は72%を超すという覚醒剤からの脱却は困難を極める。かつての栄華はもうない。「タニマチ」や「取りまき」を自ら排除して、厳しいことも指摘してくれる真の「友人」と「理解者」の声に耳を傾けることが出来るか?
何年後かに生まれ変わった清原の姿を見たい。その意味からも人間関係に注視していきたい。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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