イチロー“4257”のあゆみ ~ヤンキース・マーリンズ編~
イチローがまた新たな金字塔を打ち立てた。
現地時間6月15日、敵地でのパドレス戦の9回にライトへの二塁打を放ち、キャリア通算4257本目の安打を記録。日米通算ではあるが、ピート・ローズが持つメジャー最多安打記録:4256本を上回った。
日本で1278本、メジャーで2979本…。世紀の大偉業を達成した男が歩んできた25年間を、在籍したチームごとに区切って振り返っていきたい。
最終第3回はヤンキース&マリナーズ編。新天地での再挑戦から、メジャーの最多安打記録更新まで。イチローのこれまでの歩みをまとめた。
衝撃の移籍…“昨日の友は今日の敵”
2012年のシーズン途中、7月23日に発表されたイチローのトレード移籍。新天地はメジャー屈指の名門ニューヨーク・ヤンキースに決まった。
トレード発表からほどなくして行われた試合は、なんとセーフコ・フィールドでのマリナーズ戦。これまでの庭だった球場は敵地に変わり、チームメイトたちはみな敵となった。
しかし、球場に詰めかけた観客たちはイチローをスタンディングオベーションで迎える。一旦は打席に入りかけたイチローもタイムを取り、ヘルメットを取って深々と礼。あの光景こそ、イチローがメジャーで結果を残し、自らの実力で認められたことの証だった。
その試合でイチローは1安打・1盗塁をマーク。シアトルにさよならを告げ、新たな戦いへと移っていった。
ニューヨークで辿り着いた「4000」の金字塔
ピンストライプのユニフォームを身にまとったイチローは、2013年に新たな金字塔を打ち立てる。
8月21日のブルージェイズ戦の初回、サードを強襲して抜けていく安打を放ち、日米通算4000安打の快挙を達成。ベンチから飛び出してきたチームメイト、そして球場に詰めかけたファンとともに喜びを分かちあった。
試合後、記録達成について「4000という数字よりも、チームメイトやファンの方々があれだけ喜んでくれた」と語ったイチロー。なによりも新たな仲間とともに成し遂げることができたこと、そしてその喜びを共有することができたことを喜んでいた。
初のナ・リーグ、“控え”からの挑戦
ニューヨークでの戦いは、思っていたよりも早く終わりを告げる。2014年のオフになったイチローはメジャーでのプレーを再優先に移籍先を模索。年が明けて1月、獲得に名乗りを上げたのがマイアミ・マーリンズだった。
入団発表は球団社長やGMら首脳陣が来日して行われるなど、熱意を寄せられたイチローであったが、そのポジションは厳しいものであった。
チームには大砲ジャンカルロ・スタントンをはじめとする若き有望な外野手が揃い、イチローはあくまでもスーパーサブ的な扱い。スタメンでのチャンスはほとんどないだろうというのが大方の見方だったのだ。
ただでさえ少ないチャンスの中、慣れない代打などでなかなか状態は上がらず。打率はメジャー移籍後最低となる.229を記録。それでも故障がちだった外野の穴を埋め、最終盤にはプロ24年目にして初の“投手”として出場。チームを支えるはたらきが評価され、1年契約を勝ち取った。
そして訪れた「4257」の瞬間
復活を期して臨んだマーリンズ2年目のシーズン。前年同様ポジション争いは厳しいものと見られていたが、2016年のイチローは開幕から絶好調。そこに故障者や不振者が重なり、スタメン出場の機会も徐々に増えていった。
そして迎えた6月15日、イチローが伝説を作る。
敵地でのパドレス戦の第1打席で内野安打を放ち、日米通算4256安打を記録。ピート・ローズが持つメジャー最多記録に肩を並べると、その試合の最終第5打席でライト線を破る二塁打。通算安打を4257本とし、ピート・ローズを抜いて“世界一”へと躍り出た。
“日米通算”という点で現地でも議論は巻き起こっているものの、敵地ながらペトコ・パークは大盛り上がり。さらにMLB公式サイト『MLB.com』や『FOX Sports』といった大手メディアもイチローを祝福するツイートを投稿しており、たとえ記録が“参考”扱いであろうとも、「イチローはすごい」ということを示している。
次なる戦いは、あと「21」本まで迫ったメジャー通算3000本安打...。開幕当初は1年では不可能とも思われていた記録だが、気がつけばもう射程圏だ。
すべての野球ファンに夢と感動を与え続けるイチロー。今後の戦いからも目が離せない。
イチロー通算成績(2012~2016年)
・567試合
打席1753 打数1625 得点192 安打444 二塁打51 三塁打12 本塁打14
塁打数561 打点114 盗塁66 盗塁死19 犠打5 犠飛4
四球31 敬遠1 死球0 三振51 併殺打5
打率.229 出塁率.286 長打率.345 OPS.631
※現地6月14日時点の成績です。