3000安打まであと「12」

　マイアミ・マーリンズのイチローが、また新たな偉業を成し遂げようとしている。

　現地時間29日のタイガース戦で2本の安打を放ち、メジャー通算安打は2988本。あと12本で3000安打に到達する。

　今季はすでに、ピート・ローズ氏が持っていたメジャー最多記録の4256安打を日米通算で抜き去り、通算安打の“世界記録”を樹立。あの快挙からまだ1カ月も経っていないが、新たな歓喜の瞬間が近づいている。


　それにしても、快調なペースで安打を重ねていくイチローを見ていて思うのが、「マーリンズがア・リーグだったら...」というもの。

　マーリンズはナ・リーグ所属のため、指名打者制度がない。なので、スタメンで出場できる野手はア・リーグと比べて1人減ってしまう。

　マーリンズの外野陣は左からクリスチャン・イエリッチ、マルセル・オズーナ、ジャンカルロ・スタントンというメジャーでも屈指の布陣が揃っており、それも全員が20代と活きが良い。そのため、イチローは代打か、もしくはこの中の誰かが休養する時にスタメンに入るという形での起用がメインとなるのだ。

　もし野手の出場枠がもうひとつあったなら、その最上位にいるのはイチローで間違いなかっただろう。

予想を覆す絶好調ぶり

　思い返してみると、今季は厳しい戦いが予想されていたイチロー。

　前年かつてないほどの不振に苦しみ、153試合の出場で打率は.229。安打も91本に留まった。現地メディアからは衰えを指摘する声も多く挙がり、ピート・ローズ氏の記録には届いても、残り65本だったメジャー3000本安打は難しいのでは、と言われていた。

　それがフタを開けてみれば6月中にはピート・ローズ氏超えを果たし、3000本安打も秒読み状態。イエリッチが今年も故障がちだったことや、主砲・スタントンの絶不調にも助けられ、イチローは予想よりもはるかに出場機会を増やしている。

　さらに、今季は衰えるどころか近年稀に見るほどの好調ぶりを発揮。ここまでの打率は.342と見事な復活を果たした。

年齢は敵じゃない！

　ここで、マーリンズの外野3人衆とイチローの成績を比較してみよう。

【マーリンズの外野陣】
イエリッチ：73試　率.314（261－82） 本6　点38　出.399　長.475　OPS.874
オズーナ：75試　率.319（282－90） 本16　点44　出.372　長.564　OPS.936
スタントン：66試　率.223（242－54） 本15　点40　出.318　長.450　OPS.768
イチロー：65試　率.342（155－53） 本0　点10　出.417　長.381　OPS.798

　苦しむスタントンは別にして、イエリッチとオズーナはともに3割超えを果たすなど、その実力を発揮中。しかし、それでもイチローの打率には及ばない。100～130打数ほどの違いがあるとは言え、イチローの好調ぶりがお分かりいただけるだろう。

　イチローの中に「衰え」など存在しない。走・攻・守すべてにおいて高いレベルでのプレーを見せており、“走”では日米通算500盗塁を達成するなど7つの盗塁を記録。42歳にして一塁到達タイムが4秒を切るという離れ業もやってのけた。

　年齢は不安要素ではない。それを実力で証明し、出場機会を勝ち取った。

3000安打と500盗塁、同時達成は史上初

　歴史を塗り替え、常識を覆し続ける男が目指す、次なる記録が「メジャー3000本安打」。メジャーの長い歴史の中でも29人しか達成しておらず、現役でこれに到達しているのはアレックス・ロドリゲスただ一人だ。

　ちなみに、そのうち2000年以降に達成したのはわずか6人（※下記参照）。さらに、3000安打と500盗塁を同一シーズンに達成した選手というのは今までに一人もいない。イチローが史上初のケースとなる。

　日米通算でピート・ローズ超えを果たした時、“日米通算”という部分で記録の扱いに関して少々物議をかもした。どちらにも言い分があり、それぞれの記録にかける思いから、衝突してしまうこともある意味仕方がないことなのかもしれない。

　しかし、今回は純粋にメジャーだけでの記録。現地でも文句なしに讃えられることだろう。

　歓喜の瞬間はいつ訪れるか。残り12本と迫ったイチローの挑戦から目が離せない。

　
【2000年以降の通算3000本安打達成】
2000年4月15日　カル・リプケン（オリオールズ）　3184安打　
2001年10月7日　リッキー・ヘンダーソン（パドレス）　3055安打
2005年7月15日　ラファエル・パルメイロ（オリオールズ）　3020安打
2007年6月28日　グレイグ・ビジオ（アストロズ）　3060安打
2011年7月9日　デレク・ジーター（ヤンキース）　3465安打
2015年6月19日　アレックス・ロドリゲス（ヤンキース）　3107本※
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2016年??月??日　イチロー（マーリンズ）　2988安打

※ロドリゲスの記録は現地6月28日終了時点のもの