近藤一樹をトレードで獲得
昨シーズンの歓喜から一転、今年は最下位と5位を行ったり来たりという戦いが続くヤクルト。打撃陣は個人六冠の勢いで打ちまくる山田哲人を筆頭に、チーム打率はリーグ2位の.267とよく打っているものの、とにかく投手陣が苦しい。
チーム防御率4.88は12球団ワースト...。苦しい状況を打開すべく、球団はトレードに打って出る。
7月17日、ヤクルトとオリックスはトレードの成立を発表。ヤクルトは左腕の八木亮祐を放出し、その見返りとしてオリックスの近藤一樹を獲得した。
かつての甲子園優勝投手
近藤といえば、日大三高で2001年・夏の甲子園を制覇。その年のドラフトでは近鉄から7位で指名を受け、“甲子園優勝投手”の看板を引っさげてプロの世界へと飛び込んだ。
6年目の2008年にはじめて規定投球回に到達すると、10勝(7敗)をマークしてブレイク。翌年も12敗を喫したものの9勝をマークするなど、ローテーションに定着するかと思われたが、以降は肘の故障に悩まされるシーズンが続き、一軍登板が激減。2014年オフには戦力外通告を受け、育成選手として再契約を結ぶことになる。
それでも2015年、チームにケガ人が続出したことで支配下登録を勝ち取ると、5月1日の楽天戦で4年ぶり・日数にして1411日ぶりとなる復活勝利を記録。今季もローテの谷間を埋めるピースとして5試合に登板して2勝2敗も、防御率は8.24。特に最後の2試合の内容が悪く、6月11日を最後に一軍のマウンドから遠ざかっていた。
ヤクルトで復活した坂口と大引
近藤は「突然のことで驚いています」と球団を通じてコメントを発表。「悔いが残るとしたら、チームに貢献できたことが少なかったということです。そういう自分に、改めてチャンスをくれた両球団に恩返しをするためにも、これからも精一杯がんばります」と新たな決意を語った。
偶然か必然か、新天地となるヤクルトには顔なじみの仲間がいる。坂口智隆と大引啓次である。
大引はもともとオリックスでプロのキャリアを始めた選手。トレードで2013年から日本ハムへと移った後、2014年のオフにFA宣言。日本ハムからヤクルトへと移籍した。
そこに今季から加わったのが坂口。昨シーズン限りでオリックスを自由契約となった後、ヤクルトから誘いを受けて入団した。
オリックス時代にもコンビを組んでいた坂口・大引という並びが、ヤクルトで復活――。すると、2人も復活の気配を見せはじめる。
坂口は開幕から打率3割をキープ。現在は少し落としたものの.2916でリーグ13位タイという成績をマークしている。大引も故障で離脱した影響から規定打席には到達していないが、ここまで.292とキャリア最高ペースの数字だ。
特に投手事情の苦しいヤクルトだけに、つけ入るスキは多い。健康でさえいれば、近藤に与えられるチャンスもこれまで以上に多くなるだろう。坂口、大引と同じ“猛牛魂”を持つ右腕にも、この2人の良い例につづくような活躍に期待がかかる。
残された“いてまえ戦士”としても...
実は、オリックス・バファローズというチームの中で“近鉄”の在籍歴を持つのは、この近藤が最後であった。
今では数少なくなった“いてまえ戦士”たち...。現役として残っている選手は以下の通り。
【近鉄を知る選手たち】
牧田明久(楽天)
坂口智隆(ヤクルト)
近藤一樹(ヤクルト)
香月良太(巨人)
坂 克彦(阪神)
岩隈久志(マリナーズ)
「近鉄」の経歴を背負い、1年でも長くプレーを...。近藤や坂口をはじめ、この6選手には特別な期待もかかる。
様々な思いを背に、新天地での復活を期す近藤一樹の戦いに注目だ。