高校時代は投打に活躍
6月17日から19日のオリックス戦で3戦連続決勝弾を放ち、緒方孝市監督が“神ってる”と評した鈴木誠也(広島)。この鈴木、ひと昔前までは投手だった。
二松学舎大付属高校時代は投手として、最速148キロを記録。1年生秋からエースとして活躍した。一方打者としても高校通算43本塁打、50メートル5秒台の俊足と、抜群のセンスを持ち合わせていた。
鈴木はプロ入りを機に投手から内野手へと転向した。その後、強肩を生かすため外野手へコンバート。これが見事にはまり、熾烈な外野手争いの一角を手中に収めようとしている。
1年目から高い評価
プロ入り後は、「次世代の中心選手を育成するということで、強化選手として力を入れています」(内田当時二軍監督)という理由から、鈴木は高卒1年目から積極的に二軍戦に出場した。当時二軍の打撃コーチを務めていた森笠コーチは、「高校卒業1年目で二軍とはいえ、プロの球を打つのは難しい。その中で、ある程度の成績を残し、ケガをしないのは凄い」と絶賛していた。
シーズン終盤には、高卒ルーキーでは東出輝裕以来、14年ぶりに一軍デビューを果たし、9月16日の巨人戦でプロ初安打をマークした。それでも、この年に記録した安打は1本だけ。当時鈴木は「二軍では打ち損じても甘い球が来るが、一軍では打ち損じた次に甘い球は来ない。二軍で打てても、一軍で打てていないので満足していない」と1年目からプロ初安打を記録したが、打率.083という成績に納得はしていなかった。
順調に成長し今季ブレイク
2年目は36試合に出場し、打率.344。3年目の昨季は97試合に出場し、打率.275と着実に成長を遂げた。
4年目の今季は、2月22日のKIA戦で負傷(右ハムストリングの筋挫傷)し、出遅れた。それでも4月中旬にスタメンに定着すると、ポイントゲッターとして存在感を放ち、ここまで、87試合に出場して、打率.319、15本塁打66打点、12盗塁の成績を残す。
今季の鈴木誠也を象徴する場面といえば、6月17日から19日にかけて行われたオリックスとの3連戦だろう。17日の初戦で、延長12回にサヨナラ本塁打を放つと、2戦目にも、プロ野球10人目の2試合連続サヨナラ弾を達成した。最終戦では、同点で迎えた8回に決勝本塁打を放ち、3試合連続V弾を達成。球団の3試合連続決勝アーチは、96年6月30日~7月3日の江藤智以来20年ぶりの快挙を成し遂げた。
打って欲しいところで、完璧に打つ。数字以上の活躍ぶりを見せている。その潜在能力の高さゆえに、もう一定の結果では満足できないほど周囲の期待は大きい。周囲の期待を一身に背負う男は、周囲の期待のプレッシャーを物ともせず、成長を続け、ただまっすぐに84年以来32年ぶりの日本一を目指し戦い続ける。