初戦敗退となった前橋育英
7月28日に行われた夏の全国高校野球選手権大会・群馬大会の決勝戦。前橋育英と健大高崎による頂上決戦は、延長12回の死闘の末、8-4で前橋育英が優勝。3年ぶり2回目の甲子園を掴んだ。
しかし、“春の関東王者”の看板を引っさげて挑んだ2度目の甲子園は、初出場の嘉手納(沖縄)の猛打に飲み込まれて初戦敗退。これが夏の甲子園で喫した初めての黒星であった。
衝撃を与えた2年生エース
初戦の岩国商業(山口)戦では9者連続三振を記録するなど、完封勝利を挙げて勢いに乗ると、2回戦の樟南(鹿児島)戦でも完封。いずれも1-0というしびれる接戦を制した。
3回戦では名門・横浜(神奈川)と激突するも、1失点(自責は0)で完投勝利と大黒柱として活躍。準々決勝でのリリーフ登板を挟み、準決勝も完投勝利。迎えた決勝の延岡学園(宮崎)戦でも3失点で完投と、6試合で50イニングを投げて自責はわずかに「2」だけ。防御率0.36と驚異の成績を残し、2年生ながら夏の主役となった。
ところが、最後の夏は群馬大会の3回戦で健大高崎に敗れ、甲子園に出場することもできず。連覇の夢は早々に潰えてしまった。
それでも、“超高校級”の評判は変わらず。秋のドラフトでは高校生の目玉として注目を集め、西武が単独1位で指名。プロへの扉が開いた。
“ジンクス”を打ち破れ!
「甲子園優勝投手は大成しない」――。
これは野球ファンの間でよく言われる“ジンクス”のひとつである。
プロ野球界における現役の“甲子園優勝投手”を見てみると、小笠原慎之介(中日)、高橋光成(西武)、藤浪晋太郎(阪神)、島袋洋奨(ソフトバンク)、斎藤佑樹(日本ハム)、近藤一樹(ヤクルト)、そして松坂大輔(ソフトバンク)の7人。
まだまだこれからの若い選手が多いことや、なにを持って“大成”とするのかなど、判断は難しいところではあるのだが、なんとなく物足りなさを感じるのも分かる気がする。
ただし、高橋光成はこれらの投手たちとは少し違う。というのも、7人のうち高橋だけが2年の時に優勝投手となっているのだ。“ジンクス”の打破へ、男の右肩にかかる期待は大きい。
華々しすぎるデビュー
プロ入り1年目の2015年、前半戦は体づくりをメインに過ごしたものの、8月には一軍に昇格。8月2日のソフトバンク戦でプロ初登板・初先発を果たした。
残念ながらプロ初勝利とはならなかったものの、9日のオリックス戦で6回途中無失点の好投を見せてプロ初勝利。これで勢いにのると、23日のロッテ戦ではプロ初完封。あの松坂大輔と並ぶ高卒のプロ初登板から4試合目での完封勝利を記録し、話題となる。
結局、8月はプロ初勝利やプロ初完封を含む月間4勝を挙げ、月間MVPも受賞。デビュー月に月間4勝以上を挙げたのは、ドラフト制度導入後では史上初の快挙であり、高卒新人の月間MVPは藤浪晋太郎以来で史上5人目。
また、18歳6カ月でのMVP受賞は、18歳10カ月で受賞した松坂の記録を更新する両リーグの最年少記録。華々しすぎるスタートを飾った1年目は、8試合の登板で5勝2敗、防御率3.07という成績で終えた。
壁にぶち当たっている2年目
ところが、大きな期待を受けて臨んだ2年目のシーズンは苦しい戦いが続いている。
ここまで15試合の登板で3勝9敗と大きく負け越し、防御率も3.66。最下位に沈むチームとともに低迷がつづく。
やはり、「甲子園優勝投手は大成しない」のか……。
全国制覇から3年、高橋光成にとってこの夏は自らの真価を証明するための“試練の夏”になる。