いよいよ開幕、夏の甲子園!
日本の夏の風物詩「全国高校野球選手権大会」が、8月7日(日)に開幕する。
これまで97回の歴史の中で、数多くのヒーローを産んできた夏の甲子園。今年の開幕を前に、これまで“夏の主役”となった男たちを振り返っていくのがこの企画。
今回は、誰もが知っている近年の甲子園のヒーロー。10年前の夏、日本を熱狂させた男といえば...。
日本中を虜にした“ハンカチ王子”
2006年の夏は、この男のものだった。早稲田実業のエース・斎藤佑樹である。
端正な顔立ちに加え、マウンド上にいながらハンカチで汗を拭う上品さで人気が爆発。世の女性たちを中心に“ハンカチフィーバー”が拡大していく。
そんな勢いに乗せられるように、あれよあれよという間に勝ち進んでいった早実。あの荒木大輔を擁した1980年以来、26年ぶりとなる決勝進出を果たした。しかし、初優勝を目指す都の名門に決勝戦で立ちはだかったのが、ディフェンディングチャンピオン・駒大苫小牧である。
夏連覇王者は、この年も“順当”に決勝まで進出。夏の甲子園3連覇という偉業に王手をかけ、早実との決戦に臨んだ。以下は、その決勝戦のランニングスコアである。
【2006夏・決勝戦】
駒苫|000 000 010 000 000|1
早実|000 000 010 000 000|1
なんと、延長15回でも決着はつかず。翌日の再試合へと持ち越しとなったのだ。
決勝戦の再試合は、1969年の松山商-三沢以来で37年ぶり。斎藤は延長15回を一人で投げ抜き、最後まで一歩も引かず最少失点で投げ抜いた。
そして迎えた翌日の再試合、斎藤は再び甲子園のマウンドに登る。疲労もピークに達しようという中、再試合でも快投を披露。6回にソロで浴びた1点のみで抑え、4-1と3点リードで9回を迎えた。
ここで先頭に安打を許すと、続く打者に2ランを浴びてたちまち1点差。優勝を目前にして怪しい雲行きとなりかけるが、相手の4番・5番を執念で打ち取り二死。そして打席に迎えるは田中――。ここまで驚異的な投げ合いを演じてきた2人が、最後は直接対決するというドラマチックな展開に、球場は大いに沸き立った。
まさに意地と意地のぶつかり合い。斎藤がこの日最速となる147キロを計測するなど、持てる力を振り絞って立ち向かっていけば、田中も必死に食らいついてファウルで粘る。それでも、最後は外の真っ直ぐにバットが空を切り、試合終了。早実が駒大苫小牧の3連覇を阻止し、悲願の甲子園初優勝を飾った。
大学進学、そしてプロへ
日本中を巻き込む大フィーバーを巻き起こした男は、悩みぬいた末にひとつの決断を下す。
大学進学――。自身を「未熟」と語った男は、早稲田大学へ進学する道を選択。もうひと回り、ふた回り成長してからのプロ挑戦を望んだ。
甲子園のスターから、神宮のスターへ。大学進学後も期待通りの活躍でチームを牽引し、集大成となる大学4年時にはリーグ優勝と神宮大会優勝に貢献。大学でも栄光を掴み、満を持してプロの世界へと乗り込んでいった。
しかし、各カテゴリーで栄光を掴んできた男も、プロでは苦戦が目立つ。プロ入りから6年、通算成績は14勝20敗。右肩痛にも悩まされ、思うような活躍ができないままここまで来てしまった。
あの夏から10年、あの輝きをもう一度...
あの夏から10年目となる今シーズンも、開幕は二軍で迎えた。
登録と抹消を繰り返されながらも、3度先発のチャンスをもらって勝利なし。最初の2先発はなんとか試合を作りながら勝ちはつかずという内容であったが、7月28日の西武戦は2回までに5失点を許す苦しい投球で4回途中KO。今季初勝利よりも先に初黒星がつき、二軍降格が決まった。
指揮官から大きな期待を受けながらも、応えることができない日々。最近ではスキャンダルが取り沙汰されたりと、今年も苦境から脱出するきっかけを掴めないでいる。
高校、大学とチームを栄光へ導いてきた男はこのまま終わってしまうのか...。もう一度輝きを放つために、男はこれからもきっかけを求めてもがき苦しむ。