野球界の“本田圭佑”が一軍デビュー
本田圭佑――。その名を聞けば、多くの人がサッカー日本代表のエースを思い浮かべるだろう。しかし今回は、本田は本田でもACミランに所属する“あの”本田圭佑ではなく、西武ライオンズの本田圭佑の話だ。
西武の本田圭佑は東北学院高から東北学院大を経て、ドラフト6位で入団。サッカー界のスーパースターと同姓同名ということで高校時代から注目を集めていたルーキー右腕がついに、9月9日、初の一軍昇格を果たした。
「予想してなかったから、びっくりした」。これが率直な感想だった。昇格の話を聞いたのは、前日の午後10時前だったという。
初の一軍は、わからないことだらけ。練習後には、同じルーキーだが一軍の“先輩”でもある野田昇吾の後を少しこわばった面持ちでついていく本田。「一軍での動きがわからなかった」と苦笑いだったが、「うれしい気持ちと緊張の両方」と笑顔をのぞかせた。
同期の活躍…「焦りはなかった」
今年の新人は、ドラフト1位の多和田真三郎が6月19日に初勝利を挙げると、9月13日現在で6勝5敗。同7位の呉念庭も7月10日に初出場すると、8月中旬以降はスタメンで起用されている。また、同3位の野田も中継ぎとして20試合に登板するなど、活躍を見せている。
10人の新人のうち、6番目の昇格となった本田。他のルーキーが一軍で活躍している姿を見ても「焦りはなかった」と話す。
「スカウトの方にも、『2年後、3年後でいいから』と言ってもらっていた。課題もたくさんあったので、それを克服する時間が必要だった。もっと時間がかかるかなと思っていたけど、ここまでは長くなかった」。
じっくりと、目の前の課題に向き合い、一軍で戦える力を育んでいた。そしてその間、本田は確実に手応えを感じていた。
ファームでの成績は18試合の登板で5勝2敗、防御率5.03。「プロ入り直後は二軍戦でも全く通じなかった」と話すが、最近は試合を作れるようになり、先発ローテーションも任されるようになった。コーチやブルペンキャッチャーにも「まっすぐが速くなった」との評価をもらったという。「ストライクが入るか入らないかくらいのレベルだった」変化球も、苦しい場面でストライクが取れるようになった。
そして一軍昇格の2日後、9月11日のソフトバンク戦で本田は一軍デビューを果たした。4点ビハインドの7回に4番手として登板。先頭の吉村を左飛に打ち取ると、続く明石はインコースへの直球で見逃し三振に。その後、江川に左前打を許し、9番高谷に死球を与えたが、最後は1番本多を中飛に抑えピンチを脱出。続く8回はテンポよく3者凡退で切り抜け、2回を1安打1奪三振1死球の内容で無失点に抑えた。
上々のデビューを飾った本田。今後は、東北学院大の先輩でもある岸孝之のように先発としても期待されているが、そのためには乗り越えないといけない壁がある。
最大の課題は4、5回。「やはり、(相手が)2巡目になってくると、つかまって球数が増えてしまったり、先頭を出して苦しい場面を作ってしまう」と、現状を冷静に語った。
チームとしても投手力に課題を抱えていることは明らか。特に先発陣の駒不足は深刻で、この時期に規定投球回に達している選手がいないことからも、その深刻さがうかがえる。新戦力の台頭が待ち望まれていることは間違いない。
「自分は三振をとって圧倒できるピッチャーではない。低めにコントロールするなど、球種を使って打ち取っていくピッチングをしていきたい」。今はまだ、その“名前”が先行してしまっているが、彼の「伸びしろ」に期待したい。