リミッターを外した22歳の怪物
男にとって、日本はもう狭すぎるのかもしれない...。
まさに完全無欠。その投球につけ入るスキなどまるでなかった。
28日の西武戦。前日に優勝が決まっていれば“消化試合”となっていたところが、マジック「1」で回ってくるという“引き”の強さ。もはや大谷のために用意された舞台だったと言っても過言ではない。
29人の打者に対し、許した安打は1本。与えた四球も1つ...。序盤から三振の山を築き、5回一死まではパーフェクトピッチング。最終的には15個の三振を奪い、スコアボードに「0」を並べた。
味方の援護は、レアードのソロによる1点だけ。しかし、この日はその1点で充分だった。
試合後、「ピッチングは1回も褒めたことはないんですけど...最高でした!」と栗山英樹監督が語っていたが、その言葉がすべてを表していたように思う。リミッターを外したかのような投球は、4年目にしてキャリア最高の投球だったと言えるだろう。
“意識”して臨んだ「高卒4年目」
「4年というと、大学だったら最後の年。やってきたこの3年間の集大成だと思って結果を残したい」。今年の1月、男は来たる4年目のシーズンへ向けてこのように意気込みを語った。
では、男が4年目のシーズンここまでで残した成績を見てみよう。
【大谷翔平の4年目】
▼ 投手
21試(140回) 10勝4敗(率.714) 奪三振174 与四死53 防御率1.86
▼ 野手
104試 打率.322(323-104) 本塁打22 打点67
三振98 四死球55 盗塁7 出塁率.416 長打率.588 OPS1.004
序盤に投手の方で出遅れがあったり、終盤も故障により投げられない期間がありながら、3年連続の2ケタ勝利をクリア。規定投球回に3イニング届いていないものの、防御率もリーグトップの石川歩(ロッテ)を上回る数字を残している。
さらに、今年に入って飛躍的に成長したのが打撃。主要3部門すべてでキャリア最高の成績を残し、自身2度目の2ケタ勝利&2ケタ本塁打を達成。あのベーブ・ルースでもその偉業は1度しか達成できていないため、複数回の“ダブル2ケタ”は史上初の快挙となる。
2ケタどころか20本以上の本塁打を記録し、シーズン100安打をマーク。さらに「1番・投手」として初球先頭打者本塁打など、様々な伝説を打ち立ててきた22歳。
自身が「集大成」として意気込んだ4年目は、男の野球人生の中でも“特別なシーズン”としてこれから後世に語り継がれていくに違いない。
“伝説の一年”の締めくくりへ...
ただし、ストーリーはまだ完結していない。伝説の締めくくりには、やはり“日本一”がふさわしいだろう。
開花した怪物は、ポストシーズンでどんな大暴れを見せてくれるのか...。投打両方でチームを10年ぶり3度目の頂点へ導くような活躍に期待がかかる。
球史に残る伝説の選手と同じ時代を生きていることに感謝しながら、これからの挑戦を見守っていきたい。