左腕不足解消!?
昨季、球界全体の問題として露呈した「左腕不足」という課題。同年秋に行われた野球の世界大会「プレミア12」の侍ジャパンメンバーを見ても、左腕で選抜されたのは松井裕樹(楽天)と大野雄大(中日)の2人だけ。球界を代表する投手たちを挙げていくと、気づけば右投手が多数を占めるというような状態だった。
昨年のセ・パ両リーグにおいても、規定投球回に到達した日本人左腕といえばセ・リーグが石川雅規(ヤクルト)、岩田稔(阪神)、能見篤史(阪神)、大野雄大(中日)の4人で、パ・リーグに関しては吉川光夫(日本ハム)ただ一人。日本人左腕は“絶滅危惧”状態に陥っていたのだ。
今季はセ・リーグが田口麗斗(巨人)、岩貞祐太(阪神)、石田健大(DeNA)、能見篤史(阪神)が4人と変わらなかったが、パ・リーグが菊池雄星(西武)、和田毅(ソフトバンク)、塩見貴洋(楽天)の3人に増えた。規定投球回には到達しなかったが、大野雄大(中日)、今永昇太(DeNA)、吉川光夫(日本ハム)などもおり、深刻だった“先発左腕不足”も解消されつつある。
西武・菊池が大ブレイク
中でも素晴らしい投球を見せたのは、プロ7年目の菊池だろう。菊池は今季初めて開幕投手を任されたが、3・4月は1勝4敗と出だしは躓いた。
5月は3勝1敗、防御率1.65の好成績を残すと、同月18日のロッテ戦から途中故障で離脱した期間もあったが、9月17日の楽天戦にかけて自身10連勝。この間の防御率は1.56と、エース級の働きを見せた。シーズン最終登板となった9月28日の日本ハム戦で、6イニングを投げ、自身初となる規定投球回に到達した。
菊池と同学年の岩貞も良い働きを見せた。13年ドラフト1位で阪神に入団したが、昨季までの2年間で通算2勝と期待に応えられずにいた。
3年目の今季、開幕ローテーションを勝ち取ると、力強いストレートで相手打線をねじ伏せ、5月が終了した時点で防御率0.88を記録。疲れが見えた6月以降は、同月3日の西武戦から7月10日の広島戦まで自身5連敗と、ローテーション落ちの危機に陥ったが、夏場以降は再び安定した。特に9月は4試合に登板して4勝0敗、防御率0.58と月間MVPを獲得。シーズン最終戦となった巨人戦で白星を挙げ、2ケタ勝利も達成した。
昨季から規定投球回に到達した日本人左腕は2人しか増えていないが、石田、田口といった若手は1年間投げ抜き、侍ジャパンに選出。来季以降も彼らの活躍に期待したいところだ。
規定投球回に到達した日本人左腕
<パ・リーグ>
和田毅(ソフトバンク)
今季成績:24試 15勝5敗 防3.04
菊池雄星(西武)
今季成績:22試 12勝7敗 防2.58
塩見貴洋(楽天)
今季成績:24試 8勝10敗 防3.89
<セ・リーグ>
田口麗斗(巨人)
今季成績:26試 10勝10敗 防2.72
石田健大(DeNA)
今季成績:25試 9勝4敗 防3.12
能見篤史(阪神)
今季成績:26試 8勝12敗 防3.67
岩貞祐太(阪神)
今季成績:25試 10勝9敗 防2.90